向日葵は彩る君に恋をした

それからじぃちゃんは無事に退院して、のんびり過ごしている。薬師丸さんのもとで週に数回、花の処理を学ぶ日々。その最中、ふいに声がかかった。

「葵さん……そろそろいい頃だと思うんだけど、
君が処理した花を、他の華道家にいけさせてみないかい?」

その言葉に、手がぴたりと止まる。

「えっと、私で大丈夫でしょうか……?」

「そもそも、あの伊織くんの花を用意しているんだから、大丈夫だよ」

薬師丸さんは、いつもの柔らかい笑みを浮かべた。

「他の華道家が、君の花をどう扱うかを見るのも勉強になるしね。
あ、ちなみに今回の華道家はこの人」

差し出された雑誌を受け取る。ページを開くと、切れ長の瞳に黒髪の少年が写っていた。浅葱 弓弦(あさぎ ゆずる)。十六歳。静かな気迫をまとった、クールな印象の華道家。

「若い……」

思わずつぶやくと、薬師丸さんが軽く笑った。

「彼、伊織くんのライバルだよ」

「えっ……!」

声が裏返る。

「というか、弓弦くんが勝手にライバル視してる感じかな」

なるほど――。伊織くんの花を一番近くで扱ってきた自分が、その“ライバル”に花を提供することになるなんて。胸の奥が、少しだけざわついた。