向日葵は彩る君に恋をした

約束の時間──十六時にまた九条家へ戻ってきた。緊張でお昼もほとんど食べられず、結局、花をいじって気持ちを落ち着かせていた。

「葵さん、こちらへ」

「ありがとうございます」

亀井さんに案内されたのは、広間。静かで、空気が張りつめている。すっと正座する。襖が開き、年配の男性と真斗さんが入ってきた。

「では、始める」

その一言で、空気が変わる。
真斗さんは、私が処理した菊にそっと触れた。その手つきは伊織くんとはまた違う──優美で、高貴で、迷いがない。
白菊、リンドウ、ススキ。ひとつひとつが真斗さんの手で生けられていく。完成した生花は、息を呑むほど美しかった。さすがプロ。本物の華道家の所作。まるで花が呼吸しているようだった。

「……葵さん」

「はい」

「良い花たちでした。
とても生やすかった」

その言葉に胸が熱くなる。真斗さんは年配の男性に目配せし、
静かに告げた。

「葵さん。貴女を認めましょう。
テストは合格です」

その瞬間、視界がじんわり滲んだ。思わず深く頭を下げる。

「ありがとうございます」

声が震えた。いままでの努力が、ようやく形になった気がした。