「こんな感じ?」
「うん、そんな感じ……ちょっとドライヤー近いかも。
あつい」
「あ、そっか」
少し距離をとる伊織くん。
「ってか、自分でやるよ!
なんで手を怪我した人がやってくれるの?」
「俺がやりたいの」
「いや、でも」
「いいから」
離す気はまったくないらしく、そのまま丁寧にドライヤーをかけてくれる。
「よし、こんなもんか」
「うん、ありがとう。
じゃあ包帯かえよう」
立ち上がろうとした瞬間、左手でぐいっと引き戻される。
「いや、なんで」
背後からぎゅっと抱きしめられた。
「あったか」
「いやいや、どしたの?」
「甘えてんの」
その声が少しだけ弱くて、胸がきゅっとなる。
「怪我……ほんとごめん。
どうしよう。前みたいに花をいけられなかったら……
私」
ぎゅっと唇を噛みしめる。すると、背中越しにそっと言葉が落ちた。
「葵のせいじゃない」
その声は、驚くほど優しかった。



