「で、どうするの。お金は払うよ」
「え、いやいやいや……!」
突然の直球に、思わず両手を振って否定してしまう。
「なに?」
「私はただのバイトなので……お爺ちゃんに聞いてみないと」
そう言うと、九条さんはあからさまに顔をしかめた。
「はあ……めんどくさ」
……こいつ。さっきまで礼儀正しくて凛としていた美青年はどこへ行ったんだ。人格をどこかに置いてきたのか?すると、家政婦さんがすっと近づいてきた。
「坊ちゃん、そんな言い方なりませんよ。こちらがお願いしている側なのですから」
お茶のおかわりをつぎ足しながら、柔らかい声でたしなめる。
「あ、ありがとうございます」
「わかってるよ」
九条さんはぶっきらぼうに返しながら、ちらりとこちらを見る。……絶対わかってない。黒井さんが戻ってきて、封筒を差し出した。
「こちら、先ほどのお金になります」
受け取って中を確認する。
「ありがとうございます……って、多いですよ。一枚」
お札が一枚多い。
「急遽でしたので、手間賃と思っていただければ」
そう言われる。
「いやいやいや……!」
「とにかく、受け取ってください」
ぐいっと押し切られた。すごいな……お金持ちって。呆然としていると──
「……先、着替えてくる。ちょっと待ってて」
九条さんはさっと部屋を出ていった。残された私は、ぽつんと座りながら思う。なんだあの二重人格男は。



