王宮の奥深く、私たち新婚夫婦のために用意された豪奢な寝室。
湯浴みを終え、最高級の絹で織られた肌触りの良い夜着に身を包んだ――ちなみにココちゃん特製のフリル増し増しではなく、ジュリアンさんがお祝いの一つとして仕立ててくれた上品で清楚なもの――私は、鏡台の前で数人の女官たちに丁寧に髪を梳かれていた。
ほんのりと香油の匂いを纏った自分の姿が、鏡の中に映っている。
「……それではユフィ様。殿下はまもなくお見えになります」
ベテランの女官長が、意味ありげにふわりと微笑んだ。
「明朝、またお支度のためにお迎えに上がりますね。この度は、まことにおめでとうございます」
「あ、ありがとうございますぅ……」
女官たちが恭しく一礼し、部屋から退出していく。
パタン、と扉が静かに閉じられた。
途端に、広い部屋に私一人だけが取り残される。
シンとした静寂の中、ドクン、ドクンという自分の心臓の音だけが、耳元でうるさいほどに鳴り響いていた。
(ど、どうしよう……なんていうか、改めて……さあこれからどうぞ! って感じなの、すごく緊張する……!)
ルナポルトの港町で、ベッドが一つの部屋に泊まったあの夜。
彼の手際の良さに押し切られて、いわゆる「予行演習」的なことはすでに済ませている。
けれど、今日は違う。
大聖堂で誓いを交わし、国中の人々から祝福を受け、名実ともに『正式な夫婦』となって迎える、本物の初夜なのだ。
前世を含めても恋愛経験値が底辺な私が、こんな大きな天蓋付きベッドの横で、旦那様を待ってもじもじしているなんて。
みんなこういう時、どうしてるの!?
落ち着かなくて、夜着るの合わせ部分をぎゅーっと握りしめていると――。
静かに扉が開く音がして、私はビクッと肩を跳ねさせた。
「ユフィ。待たせたな」
部屋に入ってきたのは、湯浴みを終えたばかりのレオンさんだった。
普段の隙のない軍服や、今日の威厳ある礼装とは違う、ゆったりとした寝着姿。
少し湿り気を帯びた髪がハラリと額にかかり、ただでさえ恐ろしいほど整った顔立ちに、色気という名の破壊力が上乗せされている。
その顔見ただけで、血圧が上がりそう。
「レ、レオンさん……」
「緊張しているのか? ……あんなに大勢の前で堂々と笑っていたのに、俺と二人きりになると怯えるなんて――そそられるな」
意地悪く目を細めながら、彼が音もなく近づいてくる。
ベッドの端に座っていた私の目の前に立つと、彼は片膝をつき、下から私を見上げるようにしてそっと私の両手を握った。
「今日一日、ずっと我慢していたんだ。あの純白のドレス姿のお前が美しすぎて、他の男たちに見せたくなくて、式の途中で何度お前を攫って部屋に閉じ込めようかと考えたことか」
「ま、また物騒なことを……」
「だが、今は違う。……お前は完全に俺だけのものだ。そうだろう?」
甘く、低く、掠れた声。
レオンさんの大きな手が私の頬を包み込み、ゆっくりと顔が近づいてくる。
翡翠の瞳には、一切の隠し事のない、激重な愛情と執着が渦巻いていた。
「愛している、ユフィ。……俺の命を懸けて、お前を蕩けさせてやろう」
触れるだけの優しい口づけから、徐々に深く、熱いものへと変わっていく。
抗うことなんて、最初からできるはずもない。
私は彼にされるがまま、そっと目を閉じ、甘い熱に落ちていった――。
湯浴みを終え、最高級の絹で織られた肌触りの良い夜着に身を包んだ――ちなみにココちゃん特製のフリル増し増しではなく、ジュリアンさんがお祝いの一つとして仕立ててくれた上品で清楚なもの――私は、鏡台の前で数人の女官たちに丁寧に髪を梳かれていた。
ほんのりと香油の匂いを纏った自分の姿が、鏡の中に映っている。
「……それではユフィ様。殿下はまもなくお見えになります」
ベテランの女官長が、意味ありげにふわりと微笑んだ。
「明朝、またお支度のためにお迎えに上がりますね。この度は、まことにおめでとうございます」
「あ、ありがとうございますぅ……」
女官たちが恭しく一礼し、部屋から退出していく。
パタン、と扉が静かに閉じられた。
途端に、広い部屋に私一人だけが取り残される。
シンとした静寂の中、ドクン、ドクンという自分の心臓の音だけが、耳元でうるさいほどに鳴り響いていた。
(ど、どうしよう……なんていうか、改めて……さあこれからどうぞ! って感じなの、すごく緊張する……!)
ルナポルトの港町で、ベッドが一つの部屋に泊まったあの夜。
彼の手際の良さに押し切られて、いわゆる「予行演習」的なことはすでに済ませている。
けれど、今日は違う。
大聖堂で誓いを交わし、国中の人々から祝福を受け、名実ともに『正式な夫婦』となって迎える、本物の初夜なのだ。
前世を含めても恋愛経験値が底辺な私が、こんな大きな天蓋付きベッドの横で、旦那様を待ってもじもじしているなんて。
みんなこういう時、どうしてるの!?
落ち着かなくて、夜着るの合わせ部分をぎゅーっと握りしめていると――。
静かに扉が開く音がして、私はビクッと肩を跳ねさせた。
「ユフィ。待たせたな」
部屋に入ってきたのは、湯浴みを終えたばかりのレオンさんだった。
普段の隙のない軍服や、今日の威厳ある礼装とは違う、ゆったりとした寝着姿。
少し湿り気を帯びた髪がハラリと額にかかり、ただでさえ恐ろしいほど整った顔立ちに、色気という名の破壊力が上乗せされている。
その顔見ただけで、血圧が上がりそう。
「レ、レオンさん……」
「緊張しているのか? ……あんなに大勢の前で堂々と笑っていたのに、俺と二人きりになると怯えるなんて――そそられるな」
意地悪く目を細めながら、彼が音もなく近づいてくる。
ベッドの端に座っていた私の目の前に立つと、彼は片膝をつき、下から私を見上げるようにしてそっと私の両手を握った。
「今日一日、ずっと我慢していたんだ。あの純白のドレス姿のお前が美しすぎて、他の男たちに見せたくなくて、式の途中で何度お前を攫って部屋に閉じ込めようかと考えたことか」
「ま、また物騒なことを……」
「だが、今は違う。……お前は完全に俺だけのものだ。そうだろう?」
甘く、低く、掠れた声。
レオンさんの大きな手が私の頬を包み込み、ゆっくりと顔が近づいてくる。
翡翠の瞳には、一切の隠し事のない、激重な愛情と執着が渦巻いていた。
「愛している、ユフィ。……俺の命を懸けて、お前を蕩けさせてやろう」
触れるだけの優しい口づけから、徐々に深く、熱いものへと変わっていく。
抗うことなんて、最初からできるはずもない。
私は彼にされるがまま、そっと目を閉じ、甘い熱に落ちていった――。


