ステンドグラスから降り注ぐ七色の光の中、私たちは腕を組んで、長い長い真紅の絨毯を歩き出した。
なんかヴァージンロードみたい。
元の世界で参加させてもらった、従姉妹の結婚式みたい。
この世界には、そういう概念はないんだろうけれど。
参列している貴族たちが、ふうっと感嘆の溜め息を漏らすのが聞こえてくる。
ジュリアンさん特製の、露出を限界まで抑えつつも最高級の絹の光沢が際立つ純白のドレス。
そして何より、普段は「氷の狂犬」と恐れられているレオンさんが、見たこともないほど甘く優しげな笑みを浮かべて私をエスコートしているのだから無理もない。
祭壇の前では、国王陛下とシベリウス様、そしてセーリナ様が温かい眼差しで私たちを出迎えてくれた。
最前席には、カイルが腕組みをしてまだ少し悔しそうにしながらも、しっかりと私の晴れ姿を見届けてくれている。
「レオンティウス・アルヴェリア。汝は……」
神父様の厳かな問いかけが終わるか終わらないかのうちに、レオンさんは私の手を強く握りしめ、はっきりと通る声で宣言した。
「この命と魂のすべてを懸けて、俺のただ一人の妃を永遠に愛し、守り抜くと誓う」
あまりにも力強い誓いの言葉に、神父様が一瞬ビクッと肩を震わせた。
続いて私に向けられた問いかけに、私は大きく深呼吸をして、真っ直ぐにレオンさんの翡翠の瞳を見つめ返した。
「……常しえに、貴方の隣で」
レオンさんの大きな手が、私のベールをそっと持ち上げる。
「ユフィ。……俺の、大切な、お姫様」
掠れた甘い声と共に、彼の唇が私の唇に重なった。
それは、大勢の参列者の前だというのに、ちっとも遠慮のない、深くて熱い口づけだった。
私が恥ずかしさで顔を真っ赤にして身をよじると、レオンさんはスッと純白の礼装のマントを広げ、私の火照った顔を周囲の視線から隠すようにすっぽりと包み込んだ。
(もう、この人本当に……!)
厳かな式の後は、王都の目抜き通りを巡るお披露目のパレードだ。
美しく飾り付けられた、屋根のない特製のオープン馬車に乗り込むと、沿道には信じられないほどの大群衆が詰めかけていた。
「わぁ……すごい人!」
「殿下ーっ! ユフィ様ーっ! アルヴェリア王室に万歳!!」
「奇跡の転生乙女様、万歳!!」
ルナポルトの灯台修復や、王宮の地下での活躍と、少し尾ひれがついた大げさな噂がすっかり広まっているらしく、王都の民衆たちは熱狂的な歓声と花びらの雨で私たちを祝福してくれた。
私は嬉しくなって、馬車の縁から少し身を乗り出すようにして大きく手を振り返した。
「ありがとうー! ありがとうございます!」
しかし、次の瞬間。
ぐいっ、と強い力で腰を引かれ、私はレオンさんの腕の中にすっぽりと収まる形になってしまった。
「ちょっとレオンさん? パレード中ですよ!」
「身を乗り出しすぎるな、ユフィ。危ないだろう。……それに、あまりとびきりの笑顔を振りまくな。お前のその可愛らしさが他の奴らの目に焼き付くと思うと、今すぐこの馬車を氷のドームで覆ってしまいたくなる」
沿道の人々にすら嫉妬の炎を燃やす旦那様に、私は呆れ半分、嬉しさ半分でため息をついた。
「パレードの意味がないじゃないですか。それに、私が今一番笑顔を向けているのは、レオンさんなんですからね?」
「……っ」
私が下から覗き込むようにして微笑むと、天下の氷の狂犬はわずかに頬を染め、「お前というやつは……」と口元を手で覆って天を仰いだ。
空はどこまでも青く、澄み渡っている。
降り注ぐ花びらと歓声の中、レオンさんは私の肩を抱き寄せ、私の髪にそっとキスを落とした。


