大聖堂の控室で、ジュリアンさん特製のクラシカルで美しいウェディングドレスに身を包んだ私のもとに、一人の来客があった。
「姉さんっ……!!」
「カイル! 遠かったでしょう!?」
花嫁の控え室に飛び込んできたのは、私の実家である伯爵家を継ぐ予定の、義弟カイルだった。
私を不当に扱った両親とは違い、カイルは昔から私を「姉さん、姉さん」と慕ってくれる、お姉ちゃんっ子な可愛い弟なのだ。
今日は一応、伯爵家の代表として、隣国からわざわざ参列してくれたのである。
「姉さん、すごく綺麗だよ……! でも、俺はまだ認めないからね! あの野蛮な王子に、俺の大切な姉さんを渡すなんて……!」
「カイル、わざわざ来てくれてありがとう。でも、レオンさんはそんなに怖い人じゃないわよ?」
「騙されてるんだよ! 俺が今日、あいつの化けの皮を……!?」
カイルの言葉が、悲鳴に変わる。
いつの間にか控え室の扉の前に、純白の礼装に身を包んだレオンさんが、冷気を纏って立っていたのだ。
「……誰が野蛮な狂犬だと? ユフィの愛する弟でなければ、今すぐその口を永遠に塞いでやるところだ」
「ひぃぃっ! や、やっぱり怖いじゃないか! 姉さんを返せ!」
「断る。ユフィは俺の命であり、生涯唯一の妻だ。貴様には指一本触れさせん」
シスコンをこじらせた次期伯爵の弟と、激重旦那様。
二人の間で、バチバチと青白い火花が散っている。
「もう、二人ともやめて! カイル、レオンさんは私を本当に大切にしてくれているの。だから安心して?」
「うぅ……姉さんがそこまで言うなら……。でも、もし姉さんを泣かせるようなことがあれば、俺が絶対にアルヴェリアに連れ戻しに来るからな!」
「そんな日は永遠に来ない。俺が一生、彼女の足元に跪いて愛を捧ぎ続けるからな」
カイルが涙目で叫ぶ中、私は苦笑しながらも、レオンさんの差し出した手を取った。
「行こう、ユフィ。俺たちの未来へ」
「はい、レオンさん」
大聖堂の、両開きの大扉が開く。
まばゆい光と、割れんばかりの祝福の拍手が私たちを包み込んだ。


