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その日の夜。
灯台が直ったお祝いと、財宝を町に還元した謝礼として、私たちは港町で一番豪華な宿の料理で、大歓迎を受けていた。
「美味しい……! この海老、ぷりっぷりですね!」
「ユフィ、次はこれだ。骨は全て取ってある」
「あ、ありがとうございます……って、レオンさん、私の世話ばかりしてないでご自身も食べてください」
海の幸に舌鼓を打つ私のお皿に、レオンさんはせっせと身をほぐした魚や、殻を剥いた貝を山盛りに乗せていく。
相変わらずの過保護っぷりだけれど、王宮でのピリピリとした空気が抜けたのか、彼の表情はいつもよりずっと穏やかで優しい。
お腹がいっぱいになるまで新鮮な海の幸を堪能し、私たちは宿の最上階にある特別室へと案内された。
波の音が心地よく響く、広くて清潔な部屋。
ただ一つ問題があるとすれば……。
(……ベッドが、一つしかない)
特別室ゆえか、そこには大人三人が余裕で寝られそうな特大の天蓋付きベッドが、ドカンと部屋の中央に鎮座していた。
「……あの、レオンさん。ベッド、一つですね」
「ああ。特別室だからな。……嫌だったか?」
「い、嫌じゃないですけど!」
すでにお試し交際初日に、嫉妬に狂った彼から何度も息が止まるほどの口づけを奪われているのだ。
今さら「ベッドが一つしかなくて恥ずかしい」なんて言うのは、なんだか往生際が悪い気がする。
それでも、いざこうして静かな部屋で二人きりになり、彼の熱を帯びた視線を向けられると、どうしても手持ち無沙汰になってしまい、私はシーツの端をぎゅっと握って、もじもじしていた。
そんな私の様子を見て、レオンさんはふっと面白そうに目を細めると、私の腰を抱き寄せて一緒にベッドへと倒れ込んだ。
「!?」
「お前は……いつまで経っても、こういうことに慣れないな」
耳元でクスリと笑う、低くて甘い声。
上から覆い被さるように私を見下ろす翡翠の瞳には、愛おしさと、微かな意地悪さが滲んでいる。
(だ、だって! 前世でも今世でも、私の恋愛経験値はほぼゼロに等しいんだもん!)
心の中で全力で言い訳をしながら、私は真っ赤になった顔を両手で覆った。
ただでさえ心臓の負担が大きいのに、こんな至近距離であの狂犬王子様に甘えられて、平常心を保てるわけがない。
「……慣れるわけ、ないじゃないですか。レオンさんの顔が良すぎるのが悪いんです」
指の隙間から恨めしげに見上げると、レオンさんは一瞬だけきょとんとした後、「それは光栄だな」と底抜けに嬉しそうな笑みを浮かべた。
「……今夜は、お前が崖から落ちた時の恐怖が、まだ胸の奥にこびりついているんだ。無事だとわかっていても、こうして触れていないと、不安でどうにかなりそうになる」
いつもは強引で自信に満ちている彼が、私の髪を優しく梳きながら、微かに声を震わせた。
本当に私を心配して、失うことを恐れてくれていたのだと伝わってきて、私の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「……ごめんなさい、心配かけて。私はちゃんと、ここにいますよ」
私がそっと彼の背中に腕を回し返すと、レオンさんは「あぁ」と深く息を吐き、私の額に宝物に触れるような優しいキスを落とした。
そのまま、大きな腕で私をすっぽりと包み込むように抱きしめる。
「おやすみ、ユフィ。……俺の命に代えても、お前を守り抜くと誓おう」
波の音だけが静かに響く港町の夜。
誰よりも優しい氷の騎士の腕の中はひどく安心感があって。
私はこの世界に来て一番の、深く温かい眠りについた。
その日の夜。
灯台が直ったお祝いと、財宝を町に還元した謝礼として、私たちは港町で一番豪華な宿の料理で、大歓迎を受けていた。
「美味しい……! この海老、ぷりっぷりですね!」
「ユフィ、次はこれだ。骨は全て取ってある」
「あ、ありがとうございます……って、レオンさん、私の世話ばかりしてないでご自身も食べてください」
海の幸に舌鼓を打つ私のお皿に、レオンさんはせっせと身をほぐした魚や、殻を剥いた貝を山盛りに乗せていく。
相変わらずの過保護っぷりだけれど、王宮でのピリピリとした空気が抜けたのか、彼の表情はいつもよりずっと穏やかで優しい。
お腹がいっぱいになるまで新鮮な海の幸を堪能し、私たちは宿の最上階にある特別室へと案内された。
波の音が心地よく響く、広くて清潔な部屋。
ただ一つ問題があるとすれば……。
(……ベッドが、一つしかない)
特別室ゆえか、そこには大人三人が余裕で寝られそうな特大の天蓋付きベッドが、ドカンと部屋の中央に鎮座していた。
「……あの、レオンさん。ベッド、一つですね」
「ああ。特別室だからな。……嫌だったか?」
「い、嫌じゃないですけど!」
すでにお試し交際初日に、嫉妬に狂った彼から何度も息が止まるほどの口づけを奪われているのだ。
今さら「ベッドが一つしかなくて恥ずかしい」なんて言うのは、なんだか往生際が悪い気がする。
それでも、いざこうして静かな部屋で二人きりになり、彼の熱を帯びた視線を向けられると、どうしても手持ち無沙汰になってしまい、私はシーツの端をぎゅっと握って、もじもじしていた。
そんな私の様子を見て、レオンさんはふっと面白そうに目を細めると、私の腰を抱き寄せて一緒にベッドへと倒れ込んだ。
「!?」
「お前は……いつまで経っても、こういうことに慣れないな」
耳元でクスリと笑う、低くて甘い声。
上から覆い被さるように私を見下ろす翡翠の瞳には、愛おしさと、微かな意地悪さが滲んでいる。
(だ、だって! 前世でも今世でも、私の恋愛経験値はほぼゼロに等しいんだもん!)
心の中で全力で言い訳をしながら、私は真っ赤になった顔を両手で覆った。
ただでさえ心臓の負担が大きいのに、こんな至近距離であの狂犬王子様に甘えられて、平常心を保てるわけがない。
「……慣れるわけ、ないじゃないですか。レオンさんの顔が良すぎるのが悪いんです」
指の隙間から恨めしげに見上げると、レオンさんは一瞬だけきょとんとした後、「それは光栄だな」と底抜けに嬉しそうな笑みを浮かべた。
「……今夜は、お前が崖から落ちた時の恐怖が、まだ胸の奥にこびりついているんだ。無事だとわかっていても、こうして触れていないと、不安でどうにかなりそうになる」
いつもは強引で自信に満ちている彼が、私の髪を優しく梳きながら、微かに声を震わせた。
本当に私を心配して、失うことを恐れてくれていたのだと伝わってきて、私の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「……ごめんなさい、心配かけて。私はちゃんと、ここにいますよ」
私がそっと彼の背中に腕を回し返すと、レオンさんは「あぁ」と深く息を吐き、私の額に宝物に触れるような優しいキスを落とした。
そのまま、大きな腕で私をすっぽりと包み込むように抱きしめる。
「おやすみ、ユフィ。……俺の命に代えても、お前を守り抜くと誓おう」
波の音だけが静かに響く港町の夜。
誰よりも優しい氷の騎士の腕の中はひどく安心感があって。
私はこの世界に来て一番の、深く温かい眠りについた。


