★
――どれくらい落ちただろうか。
「……いでで」
私はゆっくりと身を起こし、自分の体をペタペタと触って確認した。
どうやら、骨も折れていないし、怪我もない。
落下する瞬間、ポケットの中にいたシロが瞬時に巨大化し、トランポリンのようなスライムのクッションになって私を受け止めてくれたのだ。
「ありがとう、シロ。助かったわ」
「きゅむっ」
元の手のひらサイズに戻ったシロを撫でながら、私は周囲を見回した。
落ちた先は、崖の内部にある薄暗い洞窟。
そこへ、上空から凄まじい吹雪の音と、魔鳥たちの悲鳴が聞こえたかと思うと――。
ドサァァァンッ!!
猛烈な勢いで、上からレオンさんが飛び降りてきた。
完全に血の気が引いた顔をして、瞳には絶望と殺意が入り混じったような、恐ろしいほどの魔力を滾らせている。
おそらく、魔鳥の群れを文字通り一瞬で氷漬けにして粉砕し、後先考えずに私を追って飛び降りてきたのだ。
「ユフィ!! ユフィ、どこだ!? 怪我は、無事か……ッ!!」
暗闇の中で悲痛な声を上げる彼に、私はパタパタと手を振った。
「あ、レオンさん! こっちです、私なら無事ですよー!」
「ユフィ……!」
私の声を聞いた瞬間、レオンさんは弾かれたように駆け寄り、私の体を力任せにギュッと抱きしめた。
その体は、信じられないほど震えている。
「よかった……っ。もしお前を失ったら、俺は世界を呪い尽くすところだった……」
「息、息がっ……苦しいです。シロがクッションになってくれたので、かすり傷一つないですから。それよりも、レオンさん! 見てくださいこれ!」
「お前が無事なら他には何も……いや、なんだこれは」
ようやく私を解放したレオンさんが、私の指さす方を見て目を丸くした。
洞窟の奥。
岩の隙間から差し込むわずかな光に照らされて、そこは尋常ではないほどキラキラと輝いていた。
「金貨です! 宝石もあります! たぶんこれ、歴代の輝煌鳥たちが長い事かけて、あちこちから集めてきた『お宝の山』ですよ!!」
そこには、港の商船から落ちたと思われる古びた金貨や、豪奢な宝飾品の数々が、文字通り山のように積み上がっていたのだ。
「見てくださいこの純金の杯! こっちの首飾りなんて、ものすごく価値がありそうです! 出張手当どころの騒ぎじゃありませんよ、大発見です!!」
両手に金貨と宝石をすくい上げ、満面の笑みで歓喜する私。
それを見たレオンさんは、安堵で腰を抜かしそうになっていた自分と、ピンピンして財宝の計算を始めている恋人との温度差に、深い深い溜め息を吐いている。
「……お前という奴は。心臓がいくつあっても足りない」
「あ、鏡の破片もちゃんと確保しました! これで灯台も直せますし、お宝も回収できるし、まさに一石二鳥です」
私がにへらと笑うと、レオンさんは呆れたように眉を下げた後、優しく私の額にコツンと自分の額をぶつけてきた。
「無事でよかった。だが、もう二度と俺の目の届かないところへは行くな」
「はい、気をつけます。……あ、レオンさんのマント貸してもらえませんか? 入れる袋無くって……」
氷の狂犬のお説教は、きらびやかな財宝を前にした私の現金な頼み事によって、あっさりと遮られた。
――どれくらい落ちただろうか。
「……いでで」
私はゆっくりと身を起こし、自分の体をペタペタと触って確認した。
どうやら、骨も折れていないし、怪我もない。
落下する瞬間、ポケットの中にいたシロが瞬時に巨大化し、トランポリンのようなスライムのクッションになって私を受け止めてくれたのだ。
「ありがとう、シロ。助かったわ」
「きゅむっ」
元の手のひらサイズに戻ったシロを撫でながら、私は周囲を見回した。
落ちた先は、崖の内部にある薄暗い洞窟。
そこへ、上空から凄まじい吹雪の音と、魔鳥たちの悲鳴が聞こえたかと思うと――。
ドサァァァンッ!!
猛烈な勢いで、上からレオンさんが飛び降りてきた。
完全に血の気が引いた顔をして、瞳には絶望と殺意が入り混じったような、恐ろしいほどの魔力を滾らせている。
おそらく、魔鳥の群れを文字通り一瞬で氷漬けにして粉砕し、後先考えずに私を追って飛び降りてきたのだ。
「ユフィ!! ユフィ、どこだ!? 怪我は、無事か……ッ!!」
暗闇の中で悲痛な声を上げる彼に、私はパタパタと手を振った。
「あ、レオンさん! こっちです、私なら無事ですよー!」
「ユフィ……!」
私の声を聞いた瞬間、レオンさんは弾かれたように駆け寄り、私の体を力任せにギュッと抱きしめた。
その体は、信じられないほど震えている。
「よかった……っ。もしお前を失ったら、俺は世界を呪い尽くすところだった……」
「息、息がっ……苦しいです。シロがクッションになってくれたので、かすり傷一つないですから。それよりも、レオンさん! 見てくださいこれ!」
「お前が無事なら他には何も……いや、なんだこれは」
ようやく私を解放したレオンさんが、私の指さす方を見て目を丸くした。
洞窟の奥。
岩の隙間から差し込むわずかな光に照らされて、そこは尋常ではないほどキラキラと輝いていた。
「金貨です! 宝石もあります! たぶんこれ、歴代の輝煌鳥たちが長い事かけて、あちこちから集めてきた『お宝の山』ですよ!!」
そこには、港の商船から落ちたと思われる古びた金貨や、豪奢な宝飾品の数々が、文字通り山のように積み上がっていたのだ。
「見てくださいこの純金の杯! こっちの首飾りなんて、ものすごく価値がありそうです! 出張手当どころの騒ぎじゃありませんよ、大発見です!!」
両手に金貨と宝石をすくい上げ、満面の笑みで歓喜する私。
それを見たレオンさんは、安堵で腰を抜かしそうになっていた自分と、ピンピンして財宝の計算を始めている恋人との温度差に、深い深い溜め息を吐いている。
「……お前という奴は。心臓がいくつあっても足りない」
「あ、鏡の破片もちゃんと確保しました! これで灯台も直せますし、お宝も回収できるし、まさに一石二鳥です」
私がにへらと笑うと、レオンさんは呆れたように眉を下げた後、優しく私の額にコツンと自分の額をぶつけてきた。
「無事でよかった。だが、もう二度と俺の目の届かないところへは行くな」
「はい、気をつけます。……あ、レオンさんのマント貸してもらえませんか? 入れる袋無くって……」
氷の狂犬のお説教は、きらびやかな財宝を前にした私の現金な頼み事によって、あっさりと遮られた。


