「ええと……これは、一体どういう状況かな?」
美しい薔薇の咲き誇る東屋。
そこでは、アルヴェリア王宮随一の毒婦と恐れられる第二王妃と、先日、自分が王宮への紹介状を書いたばかりの可憐な少女が、仲良くお茶会を開いていた。
「あ、シベリウス様! 昨日は紹介状をありがとうございました。おかげさまで定時退社できました!」
「ていじ……? いや、君が無事ならよかったけど。義母上……」
「何ですかその顔は? ユフィが淹れた紅茶、シベリウスも一杯いかが?」
すっかり意気投合した私たちを見て、シベリウス様は「……僕の常識が狂っているのだろうか」と頭を抱えつつ、空いていた椅子に腰を下ろした。
「それで、ユフィ。さっき言いかけていたけれど、王宮で探している人というのは?」
王妃様に促され、私はカップを置いて居住まいを正した。
「はい。私が探しているのは、実は……アルヴェリア王国の第二王子……レオンティウス様なんです」
ピタッ。
その名前を出した瞬間、王妃様とシベリウス様の動きが完全に停止した。
二人は顔を見合わせ、信じられないものを見るような目で私を凝視する。
「えっ!? あの、他人に一切の興味を持たない氷の狂犬を!?」
「き、君があのレオンの……!? 待て、ということは、今国境付近で大吹雪を巻き起こして半狂乱になっている原因は……君か!!」
「え 半狂乱? レオンさんが?」
私が首を傾げた、その時だった。
――ピキィィィィンッ!!
突如、東屋の周囲に咲き誇っていた真紅の薔薇が、一瞬にして真っ白な氷の彫刻へと変わった。
夏の王宮のはずなのに、気温が急激に絶対零度へと急降下し、吐く息が白く染まる。
「ひっ!?」
「な、なんだこの尋常じゃない魔力と殺気は……!」
セーリナ様とシベリウス様が戦慄して立ち上がる。
凍りついた庭園の入り口から、地獄の底から這い上がってきたような、ボロボロの姿の騎士が現れた。
「国境の森を更地にしても、見つからなかった……。ユフィ、俺のユフィ……一体どこに……」
漆黒のマントを破き、血走った翡翠の瞳でフラフラと歩いてきたのは、他ならぬレオンさんだった。
何らかの捜索を一旦諦め、絶望の中で王宮へと帰還したらしい。
周囲には、彼の感情に呼応するように鋭い氷の刃が乱舞している。
その彼が、ふと顔を上げ、東屋の中を見た。
そこにいたのは、首を傾げている私と、両隣には、彼が最も憎悪している母と、最大の政敵。
「…………っ!!」
レオンさんの頭の中で、最悪の勘違いが成立した音がした。
美しい薔薇の咲き誇る東屋。
そこでは、アルヴェリア王宮随一の毒婦と恐れられる第二王妃と、先日、自分が王宮への紹介状を書いたばかりの可憐な少女が、仲良くお茶会を開いていた。
「あ、シベリウス様! 昨日は紹介状をありがとうございました。おかげさまで定時退社できました!」
「ていじ……? いや、君が無事ならよかったけど。義母上……」
「何ですかその顔は? ユフィが淹れた紅茶、シベリウスも一杯いかが?」
すっかり意気投合した私たちを見て、シベリウス様は「……僕の常識が狂っているのだろうか」と頭を抱えつつ、空いていた椅子に腰を下ろした。
「それで、ユフィ。さっき言いかけていたけれど、王宮で探している人というのは?」
王妃様に促され、私はカップを置いて居住まいを正した。
「はい。私が探しているのは、実は……アルヴェリア王国の第二王子……レオンティウス様なんです」
ピタッ。
その名前を出した瞬間、王妃様とシベリウス様の動きが完全に停止した。
二人は顔を見合わせ、信じられないものを見るような目で私を凝視する。
「えっ!? あの、他人に一切の興味を持たない氷の狂犬を!?」
「き、君があのレオンの……!? 待て、ということは、今国境付近で大吹雪を巻き起こして半狂乱になっている原因は……君か!!」
「え 半狂乱? レオンさんが?」
私が首を傾げた、その時だった。
――ピキィィィィンッ!!
突如、東屋の周囲に咲き誇っていた真紅の薔薇が、一瞬にして真っ白な氷の彫刻へと変わった。
夏の王宮のはずなのに、気温が急激に絶対零度へと急降下し、吐く息が白く染まる。
「ひっ!?」
「な、なんだこの尋常じゃない魔力と殺気は……!」
セーリナ様とシベリウス様が戦慄して立ち上がる。
凍りついた庭園の入り口から、地獄の底から這い上がってきたような、ボロボロの姿の騎士が現れた。
「国境の森を更地にしても、見つからなかった……。ユフィ、俺のユフィ……一体どこに……」
漆黒のマントを破き、血走った翡翠の瞳でフラフラと歩いてきたのは、他ならぬレオンさんだった。
何らかの捜索を一旦諦め、絶望の中で王宮へと帰還したらしい。
周囲には、彼の感情に呼応するように鋭い氷の刃が乱舞している。
その彼が、ふと顔を上げ、東屋の中を見た。
そこにいたのは、首を傾げている私と、両隣には、彼が最も憎悪している母と、最大の政敵。
「…………っ!!」
レオンさんの頭の中で、最悪の勘違いが成立した音がした。


