「道中は君の圧倒的な費用対効果(コスパ)のおかげで、素晴らしい旅路だったよ。君を雇ったのは私の商人人生でもトップクラスの正解だった。そうだ、これは我が商会からの特別報酬だ。これでお城の貴族たちにガンガン宣伝してくれたまえよ!」
「それ昨日試供品っていってたやつでは……でも、ありがとうございます」
私も、ジュリアンさんの馬車のおかげで無事に王都まで来られたのだ。
「うむ! 君はお城に働きに出るんだったね。いいかいユフィ君、王宮は特権階級の宝庫だ! 私がいずれまたこの国へ商売に来た時のために、今のうちに有力な貴族や王族との強力なコネクションを作っておいてくれたまえ!」
爽やかなイケメンフェイスで、とんでもないミッションを丸投げしてくる。
さすがは銭ゲバ商人、別れ際まで一切の無駄がない。
「あはは、善処します。道中、お気をつけて!」
「君もな! さらばだ、私の最高のビジネスパートナーよ!」
ジュリアンさんは颯爽と御者台に乗り込むと、次の利益を求めて、新たな国へと馬車を走らせていった。
あっという間に遠ざかる馬車を見送った後、私は小さく息を吐いた。
「よし。まずは、お城に潜り込まないと」
私は懐から、昨日の夜会で親切なお兄さんから貰った紹介状を取り出した。
圧倒的な格差も、身分の壁もあるけれど。
それでも私は、自分の足でレオンさんに会いに行くと決めたのだ。
ここまで来ちゃったんだから、手ぶらで帰るわけにもいかない。
やらない後悔より、やった後悔って言うしね!
気合を入れ直した私は、ローブのポケットを軽く叩き、アルヴェリア王宮の立派な通用門へと向かって歩き出した。
もちろん、御守り替わりの、翡翠色のガラス玉が嵌った、ネックレスも身に付けて。
服の下で肌に触れるその冷たいガラス玉は、あの人の真っ直ぐな瞳と同じ色をしている。
それを服の上からギュッと握りしめると、不思議と先程までの足の震えはスッと消え去っていた。


