(アルヴェリアの第二王子様です)
……とは、さすがに言えなかった。
一介の護衛が、「王子様に会いに来ました!」なんて言ったら、頭がおかしい不審者だと思われてしまう。
「その、えっと……王……、お城で働いている人、です!」
慌てて言い直すと、青年は「なるほど、お城の勤め人か」と納得したように頷いた。
「でも、お城は警備が厳しいから、関係者じゃないと中には入れないよ。何かツテはあるの?」
「それが、全然なくて。どうやってお城に忍び込もうか……じゃなくて、面会をお願いしようか悩んでいたんです」
私が正直に打ち明けると、青年は少し考える素振りを見せた後、ポンッと手を打った。
「それなら、僕が『紹介状』を書いてあげようか?」
「えっ?」
「君みたいに素直な子なら、歓迎されると思うよ。実は僕、お城に少し顔が利くんだ。お城の『女官』としてなら、すぐに潜り込める……いや、働き始められるはずだよ。仕事の合間に、その会いたい人を探してみるといい」
な、なんていい人なんだ!!
見ず知らずの私に、まさかのお城への裏口就職を斡旋してくれるなんて!
「ありがとうございます! すっごく助かります!」
「いいんだよ。僕も、君のその『会いたい人』への想いを応援したくなったからね」
青年は近くにあった紙とペンでサラサラと紹介状を書き、私に手渡してくれた。
「明日、お城の北通用門でこれを渡すといい。……君の探し人が、早く見つかるといいね」
「はいっ!」
青年は優しく微笑むと、夜会の喧騒の中へと消えていった。
私は手渡された紹介状をしっかりと胸に抱きしめた。
これでやっと、レオンさんのいるお城に入れる!
――しかし。
私はこの時、全く気づいていなかった。
私に紹介状を書いてくれたこの心優しい朴訥な青年こそが、レオンさんと王位を巡って血みどろの争いをしている最大の政敵――『第一王子』その人であることに。
そして。
私が王宮の臨時女官としてルンルン気分で働き始める頃、肝心のレオンさんは未だに「ユフィが見つからない!」と国境付近の森で吹雪を巻き起こしているという、最悪のすれ違いが発生していることにも。


