「おはよう、ユフィ!」
ギルドのホールに降りていくなり、ガルドさんの地響きのような明るい声が私を包み込んだ。
「おはようございます、ガルドさん!」
「よし、いい返事だ。じゃあ早速、この戦場……もとい、受付の仕事を叩き込んでやるぞ」
ガルドさんの説明は豪快かつ合理的だった。
街の人々の困りごとを預かり、冒険者たちに繋ぐ。
魔物討伐から迷子の猫探しまで、ここは人生の縮図のような場所。
私は前世の記憶を総動員して、事務処理の段取りを頭の中で組み立てていく。
(つまり、カスタマーサポートね。よし、効率重視でいこう)
そう決意した矢先――ギルドの重い扉が、悲鳴を上げるような勢いで開け放たれた。
「ガルドォォォ! 今月の討伐数、俺がトップだろうなァァぁ!?」
飛び込んできたのは、筋肉の塊が服を着て歩いているような大男。
全身から魔物の返り血の匂いを撒き散らしている。
「おう、ブロン。風呂へ行く前に来るんじゃねえ、鼻が曲がるぞ」
「勝利の匂いと言え! ……ん? その隣にいるのは……新人の受付嬢か? おい、嬢ちゃん! 俺様の名前を刻んでおけ、この街最強のブロン様だ!」
典型的な脳筋タイプさんかな。
でも、その瞳は驚くほど純粋で、まるで大型犬みたい。
「よろしくお願いします、ブロンさん」
「おうっ! 気に入った! しかも可愛い!」
ブロンさんが満足げに鼻を鳴らした瞬間、今度は、音もなく窓から一人の青年が滑り込んできた。
「ブロン、君は相変わらず騒がしい。新人のお嬢さんが怯えてしまうじゃないか」
細身のしなやかな肢体に、尖ったエルフの耳。
「あ、あの……窓から……?」
「扉が渋滞していたからね。僕はリュート。よろしくね、ユフィさん」
……なぜ私の名前を?
「エルフの耳は100セロン先まで届くらしいぞ。気を許すと魂まで抜かれるから、気を付けろよ?」
ガルドさんの忠告に、リュートさんは不敵な笑みで応える。
さらに、部屋の隅から立ち上る紫煙とともに、ローブを纏った老婆が現れた。
「おや、いい生気が溢れているね。若いってのは最高のご馳走だよ」
「おいおい婆さん、まだ朝だぞ」
「婆さん言うなガルド! アタシはまだ百二十歳の女盛りだよ!」
(百二十歳で女盛り!? この世界の美魔女の基準、すごい……!)
個性が強すぎる面々に圧倒されながらも、私は不思議と高揚していた。
王都の、あの冷たく凍てついた空気とは違う。
ここにはあたたかい混沌がある。
その時――ギルドの喧騒が、一瞬にして凍りついた。
ギルドのホールに降りていくなり、ガルドさんの地響きのような明るい声が私を包み込んだ。
「おはようございます、ガルドさん!」
「よし、いい返事だ。じゃあ早速、この戦場……もとい、受付の仕事を叩き込んでやるぞ」
ガルドさんの説明は豪快かつ合理的だった。
街の人々の困りごとを預かり、冒険者たちに繋ぐ。
魔物討伐から迷子の猫探しまで、ここは人生の縮図のような場所。
私は前世の記憶を総動員して、事務処理の段取りを頭の中で組み立てていく。
(つまり、カスタマーサポートね。よし、効率重視でいこう)
そう決意した矢先――ギルドの重い扉が、悲鳴を上げるような勢いで開け放たれた。
「ガルドォォォ! 今月の討伐数、俺がトップだろうなァァぁ!?」
飛び込んできたのは、筋肉の塊が服を着て歩いているような大男。
全身から魔物の返り血の匂いを撒き散らしている。
「おう、ブロン。風呂へ行く前に来るんじゃねえ、鼻が曲がるぞ」
「勝利の匂いと言え! ……ん? その隣にいるのは……新人の受付嬢か? おい、嬢ちゃん! 俺様の名前を刻んでおけ、この街最強のブロン様だ!」
典型的な脳筋タイプさんかな。
でも、その瞳は驚くほど純粋で、まるで大型犬みたい。
「よろしくお願いします、ブロンさん」
「おうっ! 気に入った! しかも可愛い!」
ブロンさんが満足げに鼻を鳴らした瞬間、今度は、音もなく窓から一人の青年が滑り込んできた。
「ブロン、君は相変わらず騒がしい。新人のお嬢さんが怯えてしまうじゃないか」
細身のしなやかな肢体に、尖ったエルフの耳。
「あ、あの……窓から……?」
「扉が渋滞していたからね。僕はリュート。よろしくね、ユフィさん」
……なぜ私の名前を?
「エルフの耳は100セロン先まで届くらしいぞ。気を許すと魂まで抜かれるから、気を付けろよ?」
ガルドさんの忠告に、リュートさんは不敵な笑みで応える。
さらに、部屋の隅から立ち上る紫煙とともに、ローブを纏った老婆が現れた。
「おや、いい生気が溢れているね。若いってのは最高のご馳走だよ」
「おいおい婆さん、まだ朝だぞ」
「婆さん言うなガルド! アタシはまだ百二十歳の女盛りだよ!」
(百二十歳で女盛り!? この世界の美魔女の基準、すごい……!)
個性が強すぎる面々に圧倒されながらも、私は不思議と高揚していた。
王都の、あの冷たく凍てついた空気とは違う。
ここにはあたたかい混沌がある。
その時――ギルドの喧騒が、一瞬にして凍りついた。


