元不良お嬢様〜小さな苺姫の物語〜

 私はやっぱり石ノ木君と喧嘩がしたかった。

 強いやつが現れればいい。

 現れないなら、
 さらに強いやつを見つけ出して、
 勝負を仕掛けるしかない。

「やっぱり、
強いやつと戦いたい」

 羊飼さんが、
 その話を受け入れるなんて思っていなかった。

「やめてください。
ご両親が心配します。
医師令嬢としてのプライドはないんですか?」

「医師令嬢としてのプライドはないけど、元不良としてのプライドならある」

「それだと元不良じゃなくて、
ただの不良ですよ。
まだ不良を捨てきれていません」

 羊飼さんは、
 会議に出席するということで、
 喧嘩当日は来なかった。

 何の会議かは教えてくれなかった。
「大人の事情」
 ということだけど、
 羊飼さんは高校生で、
 アルバイトとして執事をやっているだけなのに、
 大人も何もあるか。

 早速、
 私は石ノ木君を校舎裏へ呼び出した。

「喧嘩したい」

「オレの能力が世界破壊、
歴史改竄、
法則改変だって、
どういうことかわかってる?」

「わかろうとしてない。

私はただ、
強いやつと戦いたいだけ」

「戦うこと以外に、
やりたいことはないの?」

「苺をたらふく食べることぐらいかな」

 私の好きなものは喧嘩と苺だ。
 それ以外は思いつかない。

「歴史改竄で君が喧嘩したいと思うきっかけごと消して、
法則改変で弱体化させる。
オレはそういうことを平気でする」

「それでもいい。
そっちが能力を使うなら、
私だって容赦しない」

 私は幼い頃から、
 能力や魔法を無効化できた。

 十五秒で怪我も病気も治せるし、
 身体強化で素手のまま大人にも勝てた。

「じゃあ、バイバイ」

「異能力、無効」

 だけど、私はここにいる。
 ちゃんと存在している。
 石ノ木君の能力なんて、
 無効化すればいい。

「何も起こらない?
君って、異能力者だったりする?」

「異能力者かどうかはわからないけど、
能力ならある。
十五秒で蘇生できるし、
自分を強化できるし、
異能も魔法も無効化できる」

「君、それって先天的なもの? それとも後天的なもの?」

「わからないけど、
小学生になる頃にはもう使えたよ。
それで大人にも勝てた」

「よくわからないけど、
オレと互角に戦える?」

「たぶんね」

 こうして私と石ノ木君は戦った。

 石ノ木君が攻撃する度に、
 私は無効化していく。

 私は身体強化で、
 殴る、
 蹴る。

 最後は引き分けに終わった。

「互角にやり合えたのは初めてだ」
「私も」
「これからは、いいライバルだ」

「だといいね」

 石ノ木君は、過去を改竄できても、
 私の昔を知らなかったりするのかな?