元不良お嬢様〜小さな苺姫の物語〜

 何か面白いものがあるかなと思って入った保健委員だったが、
 意外とやることはなかった。
 なくなりそうな石鹸を補充するとか、
 そのくらいだ。

 別の日の朝、
 ニュースで「ひき逃げ事故」の報道があった。
 私だったらそんなやつがいたら速攻でぶっ飛ばす。
 それに限る。

 だが、
 その日のホームルームで、
 多摩湖ちゃんがひき逃げに遭って入院していると担任の先生から報告があった。
 私は先生に入院先を聞き、
 放課後すぐに多摩湖ちゃんの病院へ駆けつけた。

 病室の多摩湖ちゃんは、茫然とした様子だった。

「多摩湖ちゃん」
「……私、もうダメかも」

 多摩湖ちゃんは涙目になっていた。

「ダメって、なにが?」

「私の家が水泳選手、
サッカー選手、
陸上選手を出しているアスリート一家だって、
知ってるでしょ?」
「うん」
「だけどね……私の足、
もうスポーツは無理だって、 
お医者さんが……」

 多摩湖ちゃんは声を上げて泣き出した。
 私は掛ける言葉が思いつかず、
 ただそっと背中をさすることしかできなかった。

「ひき逃げに遭って……犯人、まだ捕まってないの」
「うん……」
「私、何か悪いことしたのかな……?」
「多摩湖ちゃん……」

 私はそっと多摩湖ちゃんを抱きしめた。
 多摩湖ちゃんは泣き続けた。
 布団がぐっしょりと濡れてしまうほどに。

「これから、
どうやって生きていけばいいのかわかんないよ……」

 私は必死に頭の中で返す言葉を探したが、
 何も出てこない。

 ひき逃げ犯が誰なのかさえ分かれば、
 そんな奴、速攻でぶっ飛ばしてやるのに。
 車だって叩き潰してやるのに――。