溺愛されるお嬢様

 異世界では「ベンデッタ」と名乗っていた
 私、せりおは、
 人間世界へ帰ってきた。

 帰還した私は稲光(いなびかり)家に引き取られ、
 稲光らいの義妹となる。

「今日から、お世話になります」

 たどたどしく、挨拶をする。

 異世界からは、
 カバのぬいぐるみの姿をした妖精の
 ニーフェーアーツも一緒についてきていた。

 受験に合格し、
 春、
 私は昔から憧れていた
 名門の私立白薔薇学園中等部へ入学する。

 入学式で自己紹介の順番が回ってくると、
 彼女は静かに口を開いた。

「稲光せりおです。
よろしくお願いします」

 それだけを告げると、
 席に着く。

 将来の夢も、
 やりたいことも、
 まだ決まっていない。

 いや、それ以前に、
 今の私は何事にも興味を持てず、
 すべてがどうでもよく感じていた。

 私が望んでいたのは、ただ一つ。

 ――何事もない、平凡な学園生活を送ることだけだった。