約束は、千年の時を超えて

私が十八になる年のことだった。

父上――允恭天皇が崩御された。

兄弟姉妹が久しぶりに顔を揃えたのは、喜ばしい再会ではなく、父上の葬儀の場であった。

「久しいな、かた」

私が声を掛けると、かたは静かに頭を下げた。

「はい、皇太子様」

その呼び方に、少しだけ胸が痛む。

「子どもたちは元気にしておるか」

「はい。おかげさまで」

かたは嫁いでから三人の子を授かっていた。

母となったその姿は以前よりも落ち着きを感じさせたが、その瞳に宿る光は、どこか失われているようにも見えた。

嫁ぎ先で何かあったのだろうか。

そう思った。

だが、今の私には、それを尋ねる資格はない。

「それでは、失礼いたします」

「ああ」

かたは小さく一礼すると、静かに去っていった。

やがて、父上の葬儀が始まる。

皇族や重臣はもちろん、各地の有力豪族たちも父上を弔うため宮へ集っていた。

厳かな祈りが捧げられ、弔いの儀が終わる。

そして父上は、
多くの副葬品とともに静かに葬られていった。

その光景は、父上がどれほど偉大な大王であったかを、何よりも物語っていた。

弟妹たちは皆、涙を流していた。

母上もまた、静かに涙を拭われている。

それでも私は泣かなかった。

いや――泣くことができなかった。

これから国を背負う者が、
人前で弱さを見せるわけにはいかない。

涙は胸の奥へ押し込み、
ただ父上の棺を見つめ続けた。

そして私は、心の中で静かに誓う。

父上を超える大王になること。

この国を守り抜くこと。

そして、父上が命を懸けて守り続けた人々を、今度は私が導いていくことを。