約束は、千年の時を超えて

地方の有力豪族をもてなしていた時のことであった。

私は宮中を案内しながら、
それぞれの建物や庭園について説明していた。

その時、不意に視界へ一人の姿が映る。

かるだった。

侍女と共に歩くかるは、
一人の若い男と楽しげに言葉を交わしている。

見覚えのない顔だった。

胸の奥が、ざわりと波立つ。

何とも言えぬ重苦しい感情が込み上げてきた。

「皇太子様」

ひこの声に、はっと我に返る。

「あ……すまぬ」

「もてなしの最中ですよ」

「分かっている」

そう答えたものの、
視線は何度もかるの方へ向いてしまう。

最近のひこは、以前よりもずっと厳しくなった。

それだけ私を支えようとしてくれているのだろう。

「皇太子様には、ご多忙の中、このようなお時間を賜り、心より感謝申し上げます」

豪族が深々と頭を下げる。

「礼には及ばぬ」

私も笑みを返した。

すると、その豪族は嬉しそうに口を開く。

「それに、大軽娘皇女様と息子との縁談も順調に進んでおります」

その言葉に、胸が強く締めつけられた。

「きっと、良き夫婦になられることでしょう」

私は思わず、先ほどまでかると話していた青年へ目を向ける。

……あれが、その相手か。

「皇女も十四にななりました。嫁ぐには良いお歳でございます」

ひこが穏やかに微笑む。

皆が祝福している。

当然のことだ。

皇族として生まれた以上、
政のために嫁ぐのは宿命なのだから。

「美しい皇女様をお迎えできますこと、我ら一族にとってこれ以上の誉れはございません。」

豪族は再び深く頭を下げた。

「……ああ」

私は静かにうなずく。

「こちらとしても、喜ばしいことだ」

そう口では答えた。

だが、その言葉とは裏腹に、胸の奥が鈍く痛んだ。

私は、その痛みの名をまだ知らなかった。