約束は、千年の時を超えて

今日も、あの夢を見た。

見たこともない世界へ迷い込む、不思議な夢。

最近は、その夢を見るたびに夜中に目が覚めてしまう。

眠ることを諦めた私は、
部屋の前に立つ見張りの目を避け、そっと庭へ出た。

「寒いな……」

吐く息は白く、夜風が頬を刺す。

気づけば、季節は冬を迎えようとしていた。

「薄着で来てしまったな」

私は夜空を見上げる。

満天の星が、静かに輝いていた。

「……美しい」

幼い頃は、
弟妹たちと肩を寄せ合いながら見上げた星空だった。

あの頃と同じ星が輝いているはずなのに、
今はどこか寂しく感じる。

「風邪を召されますよ」

不意に肩へ温もりが落ちる。

振り返ると、一枚の羽織を掛けてくれたかるが立っていた。

「かる……」

「皇太子様。このような時間に何をなさっているのですか?」

「それは、お主も同じであろう」

そう言うと、かるはくすりと笑った。

「私は、よくこうして星を眺めに来るのです」

昔と変わらぬ、穏やかな笑顔。

その笑顔を見るたびに、胸の奥が静かに熱を帯びる。

――まただ。

この想いは、一体何なのだろう。

「皇太子様は……あな兄様のことで眠れないのですか」

「いや」

私は小さく首を横に振る。

「最近、妙な夢を見るのだ」

「妙な夢?」

「見知らぬ世界へ迷い込む夢だ。その夢を見るたびに目が覚めてしまう」

かるは驚くことも笑うこともなく、
静かに耳を傾けてくれた。

「そうだったのですね」

そして、私を真っ直ぐ見つめる。

「もし、お悩みがございましたら、お話しください。私では何のお力にもなれません。でも、お話を聞くことならできます」

私は思わず言葉に詰まる。

断ろうとして、かるの瞳を見た。

そこには、私を案じる真っ直ぐな想いが宿っていた。

「……わかった」

私は小さく笑う。

「何かあれば、お主に話そう」

その言葉を聞いたかるは、花が咲くように微笑んだ。

その笑顔を見ているだけで、不思議と心が軽くなる。

それからというもの。

私とかるは、
夜になるとこうして庭で語り合うようになった。

誰にも知られることのない、
二人だけの時間が静かに積み重なっていった。