約束は、千年の時を超えて

古墳時代の終わり頃。

現在の奈良県明日香村一帯には、
王都が置かれていた。

その国を治めていたのは、第十九代天皇・允恭天皇。

皇后・忍坂大中姫との間には、
九人の皇子皇女が生まれた。

その第一皇子として誕生したのが、
木梨軽皇子である。

聡明で人望も厚かった木梨軽皇子は、父・允恭天皇から皇太子に立てられ、やがて国を継ぐ者として誰もが期待を寄せていた。

そして数年後、同じ皇后のもとに一人の皇女が生まれる。

その名は、大軽娘皇女。

しかし、この兄妹が後に『古事記』へ語り継がれる、日本最古の悲恋の主人公となることを、この時はまだ知る者はいなかった。