ルーチェに恋をして

耐えられなかった。
過去の恐怖に襲われ、文乃は愛から逃げ出すように走り出す。

「文乃!?」
「おい!!」

奏多と紡が呼んでいる。
それに応える余裕は文乃には無かった。
怖い、思い出したくない、逃げたい。

愛を見て当時を感情を思い出す。
階段を上がり、自室へと逃げ込んで布団に塞ぎ込む。

「うぅ……うっ……」

過去の気持ちに引っ張られ、涙が溢れて止まらない。

心配してやってきた奏多と紡も部屋の中から聞こえてくる苦しそうな泣き声に、側に行くとこも、声をかけることもできず、扉の前で立ち尽くしていた。

 *

「ねぇ、文乃ちゃんが出てこなくなってからもう三日だよ?」

そう談話室で三人に問いかけていたのは太陽だった。

「ご飯を部屋の前に置いても全く食べてないし、飲み物は部屋にあるだろうけど……このままじゃ倒れちゃうよ」
「どうにかしたくてもどうにもできねぇから困ってんだろ。あの女も相変わらず門の前でチラチラチラチラと……」
「ふみちゃん、心配だよ……声かけても返事ないし……」
「…………。」

唯一、文乃の過去を知る紡だけは気づいていた。
あの日門で出会った女子生徒が文乃の言っていた中学時代の同級生、小坂愛なんだと。
でも、その話を三人にしていいのか悩んでいた。

文乃の過去を……僕が勝手に……。

「紡」

奏多に呼ばれ、顔を上げると彼は真剣な表情でこちらを見つめていた。

「お前、なんか知ってるのか」

勘の鋭い奴……。
悩んでいた気持ちにキリをつけ三人へと言葉を投げる。

「夏休み、文乃から聞いた話だ。勝手に話すことでもない、そう思っていたんだ。」

紡は文乃から聞いた話をそのまま三人に話す。
三人は真剣な表情で文乃の過去を受け止めた。
話の最後には、全員苦しげに表情を曇らせる。
 
「——ここまでが僕が聞いた話だ。……あの門の女子生徒は文乃にとって複雑な相手なんだろう」

 紡の言葉に全員何もいえなかった。

時間だけが過ぎていく。
急に奏多が立ち上がると談話室を出て行った。

目で追いかけるが、向かった場所はわかってる。
残った僕たちも奏多を追いかけるように彼女の部屋へ向かった。