ルーチェに恋をして

メイクスタジオに戻るとマネージャーの伊東さんと運転手の岩田さんが待っていた。

メイクをしてくれた小田さんは他の仕事で居らず焦ったが、他のスタッフさんがメイクを落としてくれたお陰で、来た時と同じ姿に戻ることができ一安心。
もうステラの制服はすっかり文乃の普段着。
着替え終えると安心感に包まれた。


コンコン、と部屋の扉が鳴り「どうぞ!」と声をかけると、メイクを落とし着替えも終えた男姿の太陽が「じゃあ行こうか」と文乃を呼んだ。

色々してくださったスタッフさんへ丁寧にお礼を告げ、メイクスタジオを出ると目の前に行きでも乗ったロケバスが停まっている。

「あ。」

乗車直前、帰りに飲み物を買おうとしていたことを思い出す。
近くを見回すと少し行ったところに自販機があったので、買いに行ってもいいか太陽に聞くと「じゃあ俺も」とついてこようとしたが、当たり前に伊東さんから止められる。

「どう考えてもダメに決まってるだろ。」
「ちぇー」

太陽も人通りがそれなりにあることをわかっていたのか、大人しくバスへ乗り込んだ。
その様子に苦笑しつつ、太陽の分も買おうと決めて自販機へ向かう。
お世話になった伊東さんと岩田さんにも買っていこう。

文乃は自販機で五本買い、ゆっくりと落とさないようにロケバスに戻る。

 その途中、数人の女子高生グループとすれ違った。
 
彼女達はステラの制服に気づくと振り返り、文乃を見つめる。
見つめられている当の本人は入学時以来、いっさい他の生徒を見ていなかったので彼女達が神沢学園の生徒だとは気づいていない。

「ねぇ……あれ、ステラの制服じゃない?」「ってことはステラ!?」と興奮する少女達の中で、一人だけじっと確認するように文乃の姿を見つめていた。


「……文乃ちゃん……?」

 『愛』と書かれた可愛らしいネームキーホルダーを鞄につけた少女はポツリと呟く。


自身の名前を知る少女がいたことにも、

文乃は気づかなかった。