ルーチェに恋をして

ふっくらと柔らかそうな唇。
視界に広がるのは太陽の長いまつ毛にキメの整った綺麗な肌。
状況を理解するのにどれくらいかかっただろうか。


 太陽は文乃の唇に触れる寸前で動きを止めていた。


「……してもいい?」
「あわ、え、その……」

否定も肯定もしない文乃の顔は赤く染まっていた。
なんの反応もなく流された階段の時に比べれば、今は意識されていると理解した太陽は体を離し、太陽のようにでも静かに燃える瞳で真剣に自分の気持ちを伝える。


「俺、本気だから。」

 
文乃の顔を下から覗き込むように見つめる太陽に恥ずかしくて目が合わせられなかった。
逃げ惑う文乃の瞳にわかっていながらも、太陽は重ねて愛を呟く。


「本気で文乃ちゃんに恋してる。」


……『恋』という単語は辞書でしか知らない。
その言葉に、自分はどう返したらいいのかわからないのだ。

文乃の悩む様子を見つめながら、太陽は自身の体を座席の背面へと戻し、いつもみたいに明るい輝く笑顔で言った。

「奏多だけじゃなくて俺のことも意識してちゃんと見てから文乃ちゃんの好きを決めてほしい」
「俺、奏多に負ける気ないから。」

恋愛感情はまだ自分にはわからない。
今後もわかる日が来るのかも、想像がつかない。

「……は、い」

今はそう答えることしかできなかった。