ルーチェに恋をして

心に溜まった思いを溢すように、抑えた声からは紡の悲しみと寂しさが伝わってきた。
置いて行かれてどうしたらいいかわからなくなった紡の気持ちは兄弟のいない文乃には理解することはできても、本当の意味でわかってあげることはできない。

「そっか、キミが小日向先輩の弟さんなんだね」
「……はい」

太陽は紡の言葉を聞いて全てを理解したように話を続ける。

「弟くんはお兄さんが卒業してから会った?」
「……実家を継ぐのを俺に譲ると言いにきた時以来、会っていません」

紡の返答に「やっぱり」とわかっていたように優しく微笑む。

「会ってみるといい。小日向先輩は才能を捨ててなんかいないよ。むしろ、前以上に大切にしていると俺は思うよ」
「……」
「先輩は着物を愛している。ルーチェと一緒に」

紡の揺れる瞳は彼の戸惑いを感じさせた。
太陽は微笑み、切り取ったメモに何か書き込みながら、紡に(さと)す。
 
「お兄さんが離れて寂しい気持ちはわかる。でも、もう少し弟くんからも歩み寄ってみるといいと思うよ。小日向先輩は着物を大切にしている。……キミのこともね」

太陽から紡に渡されたメモには何が書いてあるのか見えなかった。

先輩の言葉に紡は何も返さなかったが、その表情は戸惑いながらも確実に前に進もうとしているような。


そんな気がした。