ルーチェに恋をして

「奏多は教え方が怖いんだよ」

奏多の威圧的な指導を(たしな)める紡はとにかく丁寧。
教え方が本物の先生のようで授業を受けている気分だった。
和裁師としてだけでなく、教師の才能も持っているのではとすら感じる。

「蓮も文乃ちゃんもすぐ覚えて凄いね!」

太陽先輩は俳優をしながらも全国模試で上位に食い込む天才らしく、加えて言語を三つも操るトリリンガル。
もうみんな才能に溢れすぎて開いた口が塞がらない。
先輩はとにかく褒めるスタイルで何をしても褒めてくれる。
失敗すらポジティブに褒めてくれるので常にやる気が湧いてきた。



休憩中。
文乃はずっと気になっていたことを太陽へ聞いた。

「太陽先輩」
「うん?」
「ルーチェってなんですか?」

文乃の質問にみんなの視線が太陽に注がれる。
紡だけは複雑そうな面持ちで少し視線を逸らしていた。
質問に太陽は考え込むように腕を組んで言葉を選び答える。

「うーん、僕もはっきりとわかってるわけじゃないんだけど。去年までいた先輩がルーチェを見つけて」
「相手は一般の女子生徒だったんだけど先輩は本当に幸せそうだった。ルーチェと一緒に過ごすことで自分の才能がより一層磨かれて、本当の自分を見つけたって言ってたよ。」

その話を聞くとルーチェはやっぱり恋人のことのように感じる。
——恋人を得ると幸福を得る。

ステラの噂はそういう意味なのかな?……でも

『自分の才能がより一層磨かれて、本当の自分を見つけた』とはどういう意味なのか。
 考えていると隣から冷たい声が空気を切った。

「でも、その先輩はその女性と……ルーチェと出会ったから、結局才能を捨てたんですよね?」

棘のある言葉。
棘を投げたのは、いつもはそんなことを絶対言わない紡だった。

「ルーチェは幸福を得る。そんな噂話に踊らされて恋愛なんてくだらないもののために唯一無二の才能を捨てるなんて……兄さんは大馬鹿だ」