ルーチェに恋をして

やっと意味を理解してヘンテコな奇声が飛び出す。
「お前、キスもしといて今更気づいたのかよ」ときついツッコミを受けるが本当にその通りなので何も言えない。
だって、そういう感情が自分に向けられることがあるなんて考えたこともなかったから。

「わ、私なんかのどこに好きになる要素が……」

「あ?そんなもん知らねぇよ」

口元をへの字に曲げ、照れ隠すように。


「好きになっちまったんだから……仕方ねぇだろ」
 
奏多の顔は薄暗い部屋でも赤く染まっていることがわかるくらい、わかりやすくて。
こっちまで赤くなってしまいそうだった。

 ……私は……

奏多の気持ちにどう返していいのかわからず、文乃は表情を暗くする。
人と接することさえ少し前まで全くわからなかった自分に恋愛感情なんてわかるわけない。
 
 私は奏多のことを好き……?
 友達としての好きと恋愛の好きは……何が違うの?

「ごめん……」

申し訳ないと沈んだ声で奏多に返事をする。
奏多は悲しそうに眉を下げて「それは俺の告白への返事か?」と聞き返してきた。
すぐに返答できず、少し黙るが素直に自分の気持ちを奏多に話す。

「恋愛の好きと友達の好きの違いが……よくわからなくて……」

黙って文乃の言葉に耳を傾ける奏多は文乃の答えを聞いて一つ質問をする。

「……さっき俺にキスされて、どう思った?」

その質問に胸がドキッと跳ねる。
 私は……

「ドキドキ、した」

答えは奏多にとって良いものだったのか、さっきまで暗く落ち始めていた彼の表情が途端に明るく輝きだす。
その笑顔にもまた胸の奥を跳ねさせてしまう自分がもうよくわからない。

「ならいい、今はそれでいい。」
立ち上がり、自室の電気を付けていく奏多。
急に明るくなった部屋に少し目を瞑りかけてゆっくりと目を開けるとイタズラに笑う天才ピアニストの姿が文乃の視線を独り占めした。

「俺が、お前に恋愛をわからせてやるよ」


「覚悟。しとけ?」

文乃を指差し見つめる彼の姿は、愛犬リキとは似ても似つかない。

 恋する一人の男性だった。