ルーチェに恋をして



夢中になって紡の部屋で作業を続けていると気づけば時計は十七時を過ぎていた。
気づいて声を掛けるために和室へ目をやるが紡はいない。
 
どこ行ったんだろうと周りを見回すと彼は文乃の後ろにあるベッドで寝ていた。
 
「疲れて寝ちゃったのかな?」

起こすのも可哀想だなと部屋を出るために自分の荷物を片付け始めてふと気づく。


つむくん、今コンタクトなんじゃ……

メモを読まれた後、紡と話している時に文乃は眼鏡について紡に尋ねた。
いつも眼鏡をかけているのに今日はかけていないのかと。
すると彼は「今日は視界を遮られたくないからコンタクトをつけてるんだ。まぁ、メガネでやる時もあるけどね」と教えてくれた。

「コンタクトをつけてたとしたら、このまま寝たらまずいんじゃ……?!」

文乃の父はコンタクトをした状態で寝てしまったことがあり、そのまま目にくっついてしまい次の日大惨事になったことがある。
それを思い出して文乃の顔色がどんどん悪くなっていく。
 
ど、どうしよう……とりあえず起こした方がいいかな
ゆっくりと紡のベッドに近づいてまずは様子を伺う。

「つむくん……?」

声をかけてみるがスヤスヤと眠っているのか返事はない。
……こんなに至近距離で紡の顔を見るのは初めてだった。

柔らかそうな髪の毛は意外と癖っ毛なのか、ゆるいパーマのように毛先は動いていて。
色白な肌はキメが整っていて綺麗。
まつ毛も一本一本が長くて……

「あ。」

右目の目尻の下には涙ぼくろ。
見つめ過ぎて、気づいたら紡の息が届く位置まで近づいてしまっていた。

「わわわ!」
自分の行動の不謹慎さに気づき焦ってベッドから体を下ろそうとするが動いた瞬間に紡の目がうっすらと開き文乃を見つめた。

「……ん……?」
「あ!えっと!すぐ退きま——」


 ——グイッ ボフッ

 
 ぎゅっと。
 紡に抱きしめられた。

「……?????」

 無心で考える。

 これは……

「つむくん……私は抱き枕じゃないですよぉ……」

バタバタと離れるために足と手を動かしてみるが引きこもり筋肉ゼロの文乃が意外と筋肉質な紡を動かせる訳もなく。
文乃を抱き枕と勘違いした紡は、彼女を両腕と両足でホールドしたまま。

また眠りに入ってしまったのだった。