ルーチェに恋をして



「だからって、なんで僕の部屋?」
紡はため息を吐きながら眉を下げて自分の部屋の隅に座る文乃を見つめる。

「だって……自分の部屋にいると仕事ができなくて……」

太陽からデート発言があった後、一旦その場は太陽のスマホの着信によって解散となった。
急ぎの連絡だったようで電話を出ると同時に「ごめんね、またね!」と言い残して太陽は寮を出て行き、残された三人は大きく疲労を感じてそのまま自室へと帰った。

そこまではよかった。
問題はその後。


——コンコン

自室の扉が来客を告げる。
誰だろうと思いながら執筆途中のパソコンを閉じ、扉に駆け寄り開けるとそこにはニコニコと微笑む太陽がいた。

「文乃ちゃん!デートしよう?」

急な誘いに困ったがせっかく誘いに来てくれたのに断るのも悪いと思って「……りょ、寮の前の庭園で散歩とかでもいいですか……?」と返す。
「もちろん!」と彼は嬉しそうに笑い、その後は二人で寮の前に広がる立派な庭園を散歩。

 楽しかった。

最近までハリウッドで撮影をしていたという太陽の話は小説家の文乃にとって興味深い話ばかり。
世間ではかなりの有名人らしい彼は、いろんな俳優さんの話を聞かせてくれるのだが自分の世界で生きてきた文乃には知らない名前の連続。

太陽はそんな文乃の反応が新鮮で面白いのか常に楽しそうに笑っていた。
名前通り、太陽のような彼の笑顔を見るたびに、文乃まで笑顔になって。


散歩した次の日も、太陽は文乃の部屋にやってきた。

それから毎日。
一緒に隣の校舎に行って図書室で本を読んだり、談話室で話したり。
蓮の部屋で三人並んで映画を見たりもして。
経験したことのない青春を毎日感じられてとても嬉しかった。

でも、


「そろそろ仕事しないと村田さんに締め切り怒られちゃうぅぅぅ……」
 
納期の大切さを知っている紡は「あぁ……」と不憫なものを見る目で共感の声を漏らした。