ルーチェに恋をして

少女の言う通り。

奏多とは最初から仲が良かったわけじゃない。
むしろ逆で出会いは最悪だった。
 

——『おい。』『邪魔だ、どけ根暗。』


 彼の冷たい言葉に傷つき、怯えた。
 昔を思い出して塞ぎ込みそうになった。
 
でも、最悪な出会いをした私たちが今は毎日を一緒に過ごし、笑い合っている。
……人間だから。
悪いことも起きるけどそれと同じくらい良いことも起きるって。

奏多と紡が、教えてくれた。


『大丈夫だよ。こわいって関わることを諦めて逃げなくても』

少女の声は優しく笑っているような気がした。


文乃の体は勝手に動いていた。
暗い自室から踏み出すように握ったドアノブの隙間からは入学当時、眩し過ぎて怯え隠れていたシャンデリアの輝く光がこちらに漏れていた。 
この手をどうしたらいいか、私は知っている。

『うん。文乃はもう、一人じゃないよ。』

まるで全てを知っているような少女は、自分の後ろに立っているようで。
気づいた瞬間、世界が透明に澄んだ気がした。
 
ああ。
この少女を、私は知っている。

まだ、私の中にいたんだね。
 
純粋に人を信じて疑わなかった私。
遊ぶことが大好きで、人と話すことが大好きだった私。

小学生の文乃が、高校生の文乃に微笑んだ。


——『頑張れ、私』


自分の中にまだ残っていた過去の自分に背中を押されるように、文乃は踏み出した。
 
奏多は私を受け入れてくれるかな。
……わからないけど。

でも、もう逃げたくない。

私は友達を 信じたいから。