「…………」
「…………」
作業を再開したばかりの手をまた止めて口を一文字に結ぶ。
斜め横の一人ソファーでティータイムを楽しんでいた紡のカップは彼の口元で時を止めていた。
静寂がその場を包む。
ど、ど、っどどどどどどどどう誤魔化せば?!
まばたきを何度も繰り返してしまう。
あまりの危機的状況に冷や汗が背中を伝った気がした。
文乃の事情を知っている紡はただ飲み物を飲んでいるだけ見えるが、瞳だけは「どう答えるんだ?!」と文乃に訴えているのがわかる。
焦りと同時に、冷静に考えてしまう自分もいた。
……奏多の質問はむしろ遅かったくらいで。
本来ならもっと早く聞かれていてもおかしくはなかったと思う。
これだけ毎日を共に過ごしているのに聞いてこなかったのは、奏多なりに文乃の気持ちを気にしてくれていたのだろう。
「えっと……」
文乃は悩んだ。
友達に自分は橘冬樹だと言っていいのか。
奏多のことは信用している。
でも、奏多は橘冬樹のファンで、事実を知って悲しませてしまったら。
そう思うと喉がしまって話せなかった。
何も言えず、「えっと……」と歯切れの悪い声を繰り返し、時間だけが過ぎていった。
「……悪い」
小さく聞こえた友人の罪悪感を帯びた声に、逸らしていた目を彼に向ける。
奏多は申し訳なさそうに眉を悲しく下げていた。
「なんで……」
「言いたくねぇこと聞いたな。悪い」
「あ……ち、違うの……」
はっきり言い切りたい言葉は自分の意思とは反対に小さくなってしまう。
「いいんだ。俺がまた、間違えただけだ。」
まるで自分が全て悪いと悲しみを抱えた笑顔で、彼は本の世界へと戻ってしまった。
奏多の表情に、心が、苦しくなった。
違う……違うのに。
胸の中で何度弁解を繰り返そうが、その言葉は自分の中で消えていき奏多には届かない。
奏多を違う意味で悲しませてしまった現状に、文乃は服の裾を握ることしかできなかった。
「…………」
作業を再開したばかりの手をまた止めて口を一文字に結ぶ。
斜め横の一人ソファーでティータイムを楽しんでいた紡のカップは彼の口元で時を止めていた。
静寂がその場を包む。
ど、ど、っどどどどどどどどう誤魔化せば?!
まばたきを何度も繰り返してしまう。
あまりの危機的状況に冷や汗が背中を伝った気がした。
文乃の事情を知っている紡はただ飲み物を飲んでいるだけ見えるが、瞳だけは「どう答えるんだ?!」と文乃に訴えているのがわかる。
焦りと同時に、冷静に考えてしまう自分もいた。
……奏多の質問はむしろ遅かったくらいで。
本来ならもっと早く聞かれていてもおかしくはなかったと思う。
これだけ毎日を共に過ごしているのに聞いてこなかったのは、奏多なりに文乃の気持ちを気にしてくれていたのだろう。
「えっと……」
文乃は悩んだ。
友達に自分は橘冬樹だと言っていいのか。
奏多のことは信用している。
でも、奏多は橘冬樹のファンで、事実を知って悲しませてしまったら。
そう思うと喉がしまって話せなかった。
何も言えず、「えっと……」と歯切れの悪い声を繰り返し、時間だけが過ぎていった。
「……悪い」
小さく聞こえた友人の罪悪感を帯びた声に、逸らしていた目を彼に向ける。
奏多は申し訳なさそうに眉を悲しく下げていた。
「なんで……」
「言いたくねぇこと聞いたな。悪い」
「あ……ち、違うの……」
はっきり言い切りたい言葉は自分の意思とは反対に小さくなってしまう。
「いいんだ。俺がまた、間違えただけだ。」
まるで自分が全て悪いと悲しみを抱えた笑顔で、彼は本の世界へと戻ってしまった。
奏多の表情に、心が、苦しくなった。
違う……違うのに。
胸の中で何度弁解を繰り返そうが、その言葉は自分の中で消えていき奏多には届かない。
奏多を違う意味で悲しませてしまった現状に、文乃は服の裾を握ることしかできなかった。



