ルーチェに恋をして

ふと、紡と話していて気になった。
最近聞くようなこの単語はどんな意味を持っているのだろうか?
隣で視線を床へ向けていた紡にそっと声をかけてみる。

「そういえば……さっき言ってたルーチェって……」
「ステラの迷信」
「迷信?」
「あぁ。」
紡は視線をあげて文乃の質問に答えてくれた。
ただ、彼も詳しくは知らないらしく、はっきりとした言葉は返ってこなかった。

どこから生まれたのかもわからない。
なのに広がる噂話はステラ内のみならず、一般生徒の中でも囁かれていた。

——『ルーチェを見つけた者は、幸福を得る』

それは神沢学園ができた当初からあるとかないとか。
詳細不明な噂話を話し終えると紡は乾いた声で笑う。

「まぁ、全部兄さんに聞いた話だけど。」
「そうなんだ……そのルーチェってさっきの話の流れ的に恋人、のことなのかな?」
「……さぁね」
「……?」
「詳しくはわからないんだ。でも人によって違うとも言われていたり、正しくこれ、というものはないのかもしれない」
「……そっか」

ただの噂話。だけど、文乃の好奇心はくすぐられた。

神沢学園での出会いはたくさんの変化と成長を自分にくれたから。
ここでの出来事は何か奇跡を含んでいる気がすると思えて仕方なかった。

 ルーチェ。
イタリア語で『光・輝き』。
その幸福の光は人によって変わるんだろうか?

自然と口に出していた。

「私も……見つけられるのかな……」

幸福。
その言葉が表す感情を知ってみたいと思ったから。

文乃の輝く感情とは反対に、紡は感情を閉ざす。
「…………僕は、そんなものいらない。」

紡は落ちるような声で悲しく呟いた。