ルーチェに恋をして

 *

 ——数年前。
 
 京極文乃、十二歳。
現在の実家とは違う場所に住んでいた文乃は小学校の続きで近所の中学に入学した。
小学校までは特に困ることもなく。
その風向きが変わったのは中学に入ってからだった。

中学校というのはちょうど難しい年齢でほんの少しのことから人間関係のもつれへと発展する。
でも小学生から中学生に上がったばかりの文乃にとってそんなこと知る由もない。

クラスは全員で三十人。
三つの小学校が統合された文乃の中学校はクラスが多数あり小学校からの知っている同級生も分かれていた。
文乃のクラス三年二組には七人ほど顔見知りがいて。
みんな、小学校では文乃とも遊んでいた子達。

夏休みまであと少しという時期、まだ制服が馴染んでいない少年少女が行き交う教室内で文乃はいつも一人でいる大人しそうな少女が気になっていた。

彼女は入学からずっと一人。
何か理由があるのかと思ったが特に理由も見当たらない。
ただ一人が好きな子なのかと思った、けどたまに寂しそうな顔をする彼女が気になって仕方なかった。
 
 
『小坂さん、いつも一人でいるけど話すの嫌い?』
 
ちょっとした好奇心と正義感。
クラスで仲間外れがいるのは良くないと話しかけたのが小坂愛との出会いだった。

愛は話しかけられて驚いたのか目を丸くする。

『え……嫌い、じゃなくて話す人がいないから……』
『そうなの?じゃあ私と話す?』
 
大人しそうだが、わずかに個性的な雰囲気を持っている彼女は新しいクラスに友達はいないのかずっと一人。
だったら自分が友達になったらいいと思っただけなのだ。
彼女は悩むように眉間に皺を寄せて答える。

『でも……私と話したら……』
『?』

当時の文乃はその言葉の続きがわからなかった。
 
『う、ううん……ありがとう』
彼女はわかっていたのかもしれないが言いかけて口を閉ざす。

それから一週間、愛とは朝挨拶をする仲になった。
いつも一緒に過ごす友達が登校してくるまでの数分。
それが文乃と愛の繋がりだった。
 
毎日をいつも通り過ごして学校に行って帰ってきた金曜日の夜。
 
 
祖父が、亡くなった。