ルーチェに恋をして

心地いい温度の枕に触れ、目を覚ます。
ゆっくりと頭を上げると紡がソファーにもたれながら寝ていた。
ああ、そっか……眠くなってつむくんの膝で私……。

 ……!!!!

なんだろう、この恥ずかしいのに嬉しい感情は。
羞恥心とかそういうのじゃなくてもっと純粋な……。
友達ってすごい。
胸の温かさに自分もみんなと同じになれたような気がした。

人の関わりは辛い気持ちだけじゃなくてこんな幸せな気持ちにもしてくれるんだ。
初めて本当の友情を知った気がした。

紡の綺麗な顔を覗き込む。
メガネを外した姿は初めて見た。
綺麗な肌、長いまつ毛。

自分の娘を嫁にさせたい気持ちもわかる気がした。
紡は優しくてしっかりしてるし、結婚したら大切にしてもらえそうだ。
家も老舗の呉服屋で。


……なんで帰省しなかったのかな。

本人に直接聞くのは気が引けた。
紡は聞かれたくないようだから。
寝てることをいいことに小さく呟いてみる。

「つむくんは……なんで寮に残ったの……?」

聞いたところで返事はないに決まっているのに。
体を完全に正し、開けたままのノートパソコンを畳む。
立ちあがろうとしたら手首を掴まれた。

「……気になる?なんで、俺が帰らないのか」
「つ、つむくん?!起きてたの?!」
「文乃が起き上がった位から起きてるよ」
「えっ!?」

 じゃあ私の独り言も……。

申し訳ない気持ちになった。
何も言わず部屋に戻れば良かった。
 
「……そんな顔しないでよ。別にすごい重い理由とかじゃないんだ」
「でも、話したくないなら……」
「いいよ、文乃になら。その代わり文乃のことも教えてよ。」

紡は「文乃を知りたい」と瞳を向ける。

自分のことを聞かれたことも、話したこともない。
両親はずっと過程を見ていたし、村田さんもあえて詳しく聞こうとしなかった。
今後も話すことなんてないと思ってた。

「面白い、話じゃないよ……」
「僕だってそうだ。だから()()だよ。」

「……うん。」


 過去の話をしよう。
 文乃が人嫌いになった始まりの話を。