ルーチェに恋をして



蓮の手伝いを終えて部屋を出る。
扉の前で蓮と話していた。

「本当にありがとう、ふみちゃんがいてくれて助かったよ」
「助けになれたならよかった、またいつでも言ってね」
「……うん」

蓮の手が文乃の頭に伸びて触れようとした時。
急に体が後ろに引かれ、誰かに抱き寄せられる。


「……誰だテメェ」
 
振り返り、見上げると奏多が威嚇するように蓮を睨みながら自分を抱きしめていた。
 
「ヒッ……」
蓮は突然の鋭い視線に伸ばしていた手を引っ込め扉の内側に逃げる。
隙間から震えた目がこちらを見つめていた。
どうしようと焦った文乃は顔をあげて奏多に声をかける。
 
「か、奏多くん……」
「お前、それやめろ。」
「?」

それとはどれのことだろう……なんのことかわからず、思考を巡らせるが全くわからない。

「奏多()()って呼ぶの、やめろ」

言われてわかった。
呼び捨てにしてほしい……のかな。

「……かな、た?」
「………………おう。」

満足したのか、奏多はゆっくりと文乃から手を離す。
嬉しくてあがってしまう口元を必死に下げながら文乃から目をそらしていた。
 
「にしても、なんでこの部屋から文乃が出てくんだよ。誰だよコイツ」
 
一旦収まった威嚇を再開してまた蓮を睨み出す。
お気に入りのおもちゃを取られ、怒る犬のような姿に蓮には申し訳ないが少し笑えてしまった。

「二年の安藤蓮くんだよ。授業で仲良くなって、今日はちょっとお手伝いしてたの」
「……ふん。」
 
奏多は気に入らない様子で階段へと向かってしまう。
 
「え!?えっと……蓮くんまた明日ね!」
文乃は蓮に別れを告げると焦って奏多の背中を追いかけていく。
 
蓮は扉の隙間から文乃に手を振りながら、胸がチクリと痛んだ。