ルーチェに恋をして

あはは……とどこか遠くを見つめる蓮。

そんな作業を一人でやるのは確かに大変だろうと自分が呼ばれた理由を悟る。

「このスーツを着て動くことでリアルとデジタルが一体化されて動きをデータとしてコンピューターに反映させることができるんだ。だけどこれ一人で着るのも作業するのも大変で……本当はスタジオとか数人のスタッフにお願いしてやるのがいいんだけど……」

よくわからない。
でも大人数で本来ならやるものを蓮は一人でやっていることはわかった。

……なんで一人でやっているんだろう?
彼は自分と似ている、人見知りで人と関わりたくない気持ちはよくわかる。
それでもこんな大変な作業を一人でなんて……。

蓮は文乃の表情から言いたいことがわかるのか、自嘲気味に笑った。
「はは……こんなの外注すればいい話なんだけど……」 
その瞳は暗く濁り、床を見つめる。


「ボクは他人を信用できなくて……」

蓮の言いたいことは痛いほどわかる。

 他人を信用できない。

その言葉はきっと単語以上に深い意味を持っている。
 
私もそうだ。
傷つき、恐れ、人と関わることから逃げた。
私にとっての最善だった。
部屋に閉じ籠り、ここに入るまで全てから逃げ出して物語の世界に浸った。

……『怖い』は言い訳で、本当は信用して裏切られ、傷つくことが……嫌。
 
それでも。
蓮は自分を信用してくれた。
その事実が胸をじんわりと温める。

「……蓮くん。お手伝いする機会をくれて、ありがとう」

嬉しかった。そんな蓮が自分を頼ってくれたことが。
自分にとって紡や奏多がそうだったように、蓮くんにとってのきっかけになれたらいい。
彼が望むなら、一緒に光の差す世界に出られますように。

そう願い微笑む。

儚く美しい文乃の笑みに、
蓮は息を呑んだ。


「……ルーチェ」

 一言、呟いて。