ルーチェに恋をして

固まっているうちに時間は刻々と過ぎていく。

そろそろ入らなくては……二人の友人を思い出し、文乃は震える手に力を入れた。

横開きの扉は思っていた以上に軽く、すんなりと開く。

扉の向こうにいたのは、自分と似た空気を持つ深く綺麗な紫の髪をもつ青年だった。
教室内には七個の机と椅子が規則的に並べられており、彼は二列目の一番後ろに座っている。
文乃が着ているジャケットではなく、薄紫色のカーディガンに緩く結んだネクタイが彼の暗く内向的な雰囲気に似合っていた。

扉の音に反応して後ろを振り返った彼は文乃と目を合わせ、互いに察した。
 
『この子……』
『この人……』

——『『絶対同類だ』』——

心の中なのに不思議とお互いに思っていることがわかる。
なんでだろう。
この人にはあんまり緊張しない。

相手も同じだったのか強く緊張する様子もなく彼は文乃に「……どうも」と声をかけた。

「あ……こんにちは……」 
「……」 
「……」
緊張しないからといって会話が続くわけではない。
お互いに人見知り、会話下手。
 
き……気まずい。

青年の斜め前に座った文乃は気まずい空間で授業開始まで過ごしたのだった。