ルーチェに恋をして



結局、あの後ベッドに潜り込んで泣き疲れて寝てしまった。
お風呂にも入らず、そのまま寝てしまったことに気づき体を上げる。
 
「……朝……お風呂、シャワー……」
 
重い体を気力で動かし、シャワーに向かう。
全身を洗い、モコモコの部屋着を着て髪を拭いていた時だった。

 ——コンコン

誰かの訪問を告げるノック。
肩を跳ねさせ驚き、ゆっくりと扉に近づく。

「は、はい……」

……返事がない。
気のせい……?でも……と困っているととても小さな囁きが聞こえる。
 
「……だ」
「え……?」

 ——バン!

強引に扉が開き、目を見開くと

眉間に皺を寄せ鋭い目で文乃を睨む奏多が立っていた。


「ヒッ!?」
 
強引すぎる訪問に顔を引き攣らせる文乃。
奏多もやりすぎたと思ったのか申し訳なさそうに話し始める。
 
「……コレ」
見覚えのあるメモ帳を差し出す奏多。
 
 あ……忘れてた
 
感情のまま、その場を後にした文乃。
メモ用紙のことも食器のこともすっかり忘れてしまっていた。

「……!!!しょ、食器って……」
「……片付けておいた」
 
青ざめる。
自分の食べた食器を奏多に片づけさせてしまったことが申し訳なくて慌てふためいた。

「ご、ごめ……」
「謝るな。」

謝罪を止められ、「なんで……」と困った。
奏多は視線を外したまま文乃に言う。

「昨日は……酷いこと言って……悪かった」


 え。

何に対して謝られているのか、全く検討がつかない。
昨日の件は奏多が怒って当たり前だ。
自分が余計なことを……。

「奏多くんは……悪くない、よ」
「私が余計なことを言わなければ……」

余計なことを言わなければ奏多が怒ることもなかった。

「……お前は間違ってない」
「……?」
「俺は……友達がいたこと……ないからな」
 
奏多の声はどんどん小さくなる。
その表情は困惑しているようにも苦しんでいるようにも見えて、放っておけなかった。

「……じゃあ、よかったら……私と友達に……なりませんか?」

紡がそうしてくれたように、自分も誰かに手を差し伸べられたらと思ったんだ。
私も奏多くんのことをもっと知りたいと思ったから。
性格も考え方も全然違う。

でもきっと表現の形が違うだけで。
 
 彼はなんだか、

 自分と似ている気がした。