ルーチェに恋をして

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」 
 
一歩、勇気を出して——なんて
調子に乗って小説の主人公みたいなこと言ってごめんなさい!

文乃はあまりの不快感むき出しの奏多に怯え、震える。

「っ……お前だってそんな怯えてばっかりで!友達いねぇだろ!」
「う……うぐ……」
 
奏多の言葉はナイフのように文乃の心臓を貫く。
 
「ほらみろ。お前みたいな根暗に友達なんて……」
 
やってしまった と奏多は顔を固まらせ息を呑む。
自分の言葉が文乃を傷つけることに気づいたのか、彼はそのまま口をつぐむ。

事実。
事実を言われただけだ。
今更、怒りも湧かない。
私は根暗で、愛想がなくて……挙動不審。
気持ち悪いと思われて仕方ないと思うし自分でもそう思う。

 ……でも、それでも。

「ひ、一人は友達!できましたもん……!」
「は!?」

思わず言い返してしまった。
奏多は言い返されると思っていなかったようでそのまま衝撃を受け止めている。
文乃は初めて人に言い返した勢いとやってしまったという後悔でどうしたらいいのかわからなくなり、涙が溢れてしまいそうだ。
 
「……っ……うっ……」
 耐えられず、頬に涙が落ちてしまう。
 
「お、おい……」
 
奏多は涙を流す文乃を見て立ちつくし、手を伸ばしかけ——止まった。

「ごめん……なさい……」
 
文乃はその場から逃げ出す。
食器もメモ帳も全て忘れて自室に走った。
扉を閉めて立ちつくし、ひっそりと静かに泣く。

紡と友達になれたからと、調子に乗った自分が悪いんだと自分を責めた。