ルーチェに恋をして

……もっと、利己的な理由で強請(ゆす)られると思っていた。
そんな風に一瞬でも思ったことが恥ずかしいほどに、紡は真剣に着物の未来と家のことを考えて行動しようとしている。
 
「紡くんは優しいんだね」
 
「……君、自分の才能が利用されようとしてるってわかってる?」
 
怪訝(けげん)な顔で彼は文乃を見つめる。
確かに、私の才能を探って交渉の道具にすることで、自分の利を得ようとしてるかも知れない。
 
「でも、紡くんにとっては大切なものを守るために起こした行動……なんだよね?」
 
私が彼だったら、同じように動けただろうか。

 
時代だから。
仕方ないから。
それを言い訳に逃げていたと思う。

でも紡くんは、現状を変えるために自分で考えて動いてる。

「……すごいなぁ」
心から彼を尊敬した。

「本当に、凄いよ」

そう言って笑う彼女の言葉は紡の心に柔らかく光を差した。