ルーチェに恋をして


 日本国内に設立された高校、私立神沢学園。
 国内でもかなりの生徒数を持つ高校で、その学科は多岐に渡る。
 普通科、音楽科、工業科、商業科、農業科、国際科……全ては覚えきれないが代表的なものだけでも二十一種類はあった。
 
 その中でも、この学校にしかないクラスがある。
 
 希望しても入れない、選ばれたものだけが入れる特別学科。
 才能特化クラス《STELLA(ステラ)》。
 そんな誰もが入りたがる特別クラスに無理やり放り込まれた生徒がいた。

 
 そう、私である。

 
「ヒィィィ……人間が……人間が溢れてるぅぅ……」

 京極文乃(きょうごくふみの)、十五歳。
 
 ほとんど通っていない中学を卒業し、このまま自宅で小説家業を営むつもりが、担当編集者さんと親の策略によりこの高校に放り込まれました。

 
 校門にしがみつき、あまりに広すぎてもう学校なのかちょっとした街なのかわからない敷地内を見つめ怯える。
 そんな異様な少女を見つめる人間は意外にもいなかった。
 
 それもそのはず。
 
 この少女。不登校に加え引きこもりだが、外に出て小説のネタを得るためだけに必死に存在感を消す方法を研究。
 その結果、文乃は「どんな場所であろうと気配を消す」という妙な特技を身につけてしまっていた。

「なんで……なんで高校に行かないといけないの……」
 
「何でもかんでも、中学卒業してそのまま家で小説だけ書くなんて文乃のためにならないでしょ」

 
「!?」
 
 
 背後から現れた担当編集に驚き、体が飛び上がる。
 
 心臓は激しく脈を打ち、バクバクと外にまで聞こえてきそうだった。

「む、村田さん……どうやって私の場所が……」
 
「文乃すぐ気配消して無になるからGPSつけてるのよ」
 
「私のプライバシー皆無ですか!?」
 
「嫌なら逃げ隠れる癖やめなさいよ」
 
「……無理デス……」
 
 
 人前に堂々と姿を晒すくらいならGPSで管理されたほうがマシだった。

 
「本当に、こんなオドオドした少女が日本を代表するベストセラー作家なんて誰が思うでしょうね?」

「あはは……」

 
 
 私にはもう一つ名前があった。