ルーチェに恋をして

自分の顔が青ざめていくのがわかった。

目の前に立っている黒髪の高圧的な青年はこちらを睨んだままチッと舌を鳴らし、文乃の横を通り過ぎる。

「奏多、君も食事取りに来たの?」
「それ以外ここにこねぇーだろ。」

紡はその青年と知り合いなのか気にする様子もなく普通に話していた。
 
文乃の体が震える。
 

——『邪魔』『キモ』『偽善者』
 
 
彼の高圧的で強い言葉は文乃に昔の記憶を思い出させた。
 
嫌だ。
思い出したくない。
怖い。

——逃げたい
 
 
「京極さん!?」
 
紡の声が響く食堂から逃げ出すように走り出す。
彼から逃げるように、記憶を閉じ込めるように。
食事を取りに来たことも忘れて、文乃は自室へと走って帰った。