「え……?」
零くんは椅子からスッと立ち上がると、テーブルを挟んで、私の顔の前にすっと手を伸ばしてきた。
驚いて固まる私の右の頬に、彼の少し冷たい親指の腹が、優しく触れる。
「あ、動くな」
低い絶対命令。
抵抗する間もなく、零くんの親指が、私の頬の端をかるく撫で上げた。
彼の指先が離れたとき、その親指には、ちいさなご飯粒がひとつ、くっついていた。
「あ……ご、ご飯粒、ついてたんだ……っ。ごめん、恥ずかしい……!」
真っ赤になって顔を伏せようとした、その瞬間だった。
零くんは顔色ひとつ変えないまま、私の頬に触れたその親指を、自分の唇へと運んだ。
親指についたご飯粒を、私の目の前で、自分の舌でペロリと舐めとったのだ。
「っ……!!??」
あまりに予想外で、あまりに過激な彼の行動に、私の思考は完全に消し飛んだ。
え、今、私の頬についてたやつ、零くんが……!?
「な、何して……っ、それ、私の……っ!」
大混乱して立ち上がる私を見上げて、零くんは照れる様子なんて1ミリも見せず、ただフッと意地悪く口元を歪めた。
その瞳の奥には、家の中限定で見せる、あの獰猛なオオカミの光がギラリと灯っている。
「何って、取って食っただけだろ。美味かったよ」
「だからって、普通はティッシュとかで……っ!」
「普通の奴と一緒にするな。お前は俺のもんだって、朝も放課後も言っただろ。お前の体についたもんは、ご飯粒ひとつだって他の男には触らせねぇし、全部俺のもんだ」



