「佐竹、せっかくだしこっち来いよ。」
営業の先輩が声を掛ける。
「そうそう。色んな人と話した方がいいぞ。」
歓迎会も始まってしばらく経ち、店内はすっかり賑やかになっていた。
「じゃあ失礼します。」
そう言って佐竹が席を立つ。
空いた席へ別の営業さんが座り、自然と席替えが始まった。
営業部の飲み会ではよくある光景だ。
「櫻井。」
名前を呼ばれ顔を上げる。
「ん?」
「隣、いい?」
気付けば佐竹が立っていた。
「あ、どうぞ。」
そう言うと、佐竹は私の隣へ腰を下ろした。
昼休憩や資料室では話したけれど、こうして隣で話すのは初めてだ。
少しだけ緊張する。
「飲めるんですね。」
佐竹が私のグラスを見ながら言った。
「そんなに強くはないですけどね。」
「そうなんですか?」
「カクテル二、三杯くらいなら。」
「意外です。」
「どういう意味ですか。」
思わず笑うと、佐竹も小さく笑った。
「仕事中、しっかりしている印象だったので。」
「それ褒めてます?」
「もちろん。」
さらっと返されて、少しだけ照れる。
営業部の人たちとは違う。
落ち着いていて、話すテンポも心地いい。
「佐竹は?」
気付けば、自然と呼び捨てになっていた。
本人がそうしてほしいと言ったからなのに、なぜか少しだけ恥ずかしい。
「俺ですか?」
佐竹は嬉しそうに目を細めた。
「普通に飲みますよ。」
「強そう。」
「主任には負けます。」
「確かに。」
視線の先では、高橋主任が営業さんたちに囲まれながら豪快に笑っていた。
その姿に二人同時に吹き出す。
「そういえば。」
佐竹がジョッキを置く。
「櫻井……じゃなくて、美紀は趣味とかあるの?」
突然名前で呼ばれ、一瞬だけ固まる。
「え?」
「呼び捨てでいいって言ってくれたから。」
そう言って悪びれもなく笑う。
「まぁ、そうだけど。」
なんだか調子が狂う。
「趣味かぁ。」
少し考える。
「バスケかな。」
「バスケ?」
「する方も観るほうも。」
「好きなんだ。」
「うん。」
そう答えると、なぜか佐竹は少しだけ嬉しそうな顔をした。
「俺も好きだよ。」
「ほんと?」
「うん。」
初めて見せる柔らかい笑顔だった。
その瞬間。
少しだけ。
本当に少しだけ。
佐竹 海翔という人が近くなった気がした。
営業の先輩が声を掛ける。
「そうそう。色んな人と話した方がいいぞ。」
歓迎会も始まってしばらく経ち、店内はすっかり賑やかになっていた。
「じゃあ失礼します。」
そう言って佐竹が席を立つ。
空いた席へ別の営業さんが座り、自然と席替えが始まった。
営業部の飲み会ではよくある光景だ。
「櫻井。」
名前を呼ばれ顔を上げる。
「ん?」
「隣、いい?」
気付けば佐竹が立っていた。
「あ、どうぞ。」
そう言うと、佐竹は私の隣へ腰を下ろした。
昼休憩や資料室では話したけれど、こうして隣で話すのは初めてだ。
少しだけ緊張する。
「飲めるんですね。」
佐竹が私のグラスを見ながら言った。
「そんなに強くはないですけどね。」
「そうなんですか?」
「カクテル二、三杯くらいなら。」
「意外です。」
「どういう意味ですか。」
思わず笑うと、佐竹も小さく笑った。
「仕事中、しっかりしている印象だったので。」
「それ褒めてます?」
「もちろん。」
さらっと返されて、少しだけ照れる。
営業部の人たちとは違う。
落ち着いていて、話すテンポも心地いい。
「佐竹は?」
気付けば、自然と呼び捨てになっていた。
本人がそうしてほしいと言ったからなのに、なぜか少しだけ恥ずかしい。
「俺ですか?」
佐竹は嬉しそうに目を細めた。
「普通に飲みますよ。」
「強そう。」
「主任には負けます。」
「確かに。」
視線の先では、高橋主任が営業さんたちに囲まれながら豪快に笑っていた。
その姿に二人同時に吹き出す。
「そういえば。」
佐竹がジョッキを置く。
「櫻井……じゃなくて、美紀は趣味とかあるの?」
突然名前で呼ばれ、一瞬だけ固まる。
「え?」
「呼び捨てでいいって言ってくれたから。」
そう言って悪びれもなく笑う。
「まぁ、そうだけど。」
なんだか調子が狂う。
「趣味かぁ。」
少し考える。
「バスケかな。」
「バスケ?」
「する方も観るほうも。」
「好きなんだ。」
「うん。」
そう答えると、なぜか佐竹は少しだけ嬉しそうな顔をした。
「俺も好きだよ。」
「ほんと?」
「うん。」
初めて見せる柔らかい笑顔だった。
その瞬間。
少しだけ。
本当に少しだけ。
佐竹 海翔という人が近くなった気がした。
