エリート同期は私の初恋でした

食堂は昼休みの社員で賑わっていた。

私たちは昼食を受け取り、渚が確保してくれていた窓際の席へ向かう。

「今日は冷やし中華!」

渚が嬉しそうにトレーを置く。

「やっぱり暑い日はこれだよね。」

「本当に毎日暑いね。」

私は冷やしうどんの器を見ながら笑う。

「佐竹くんは日替わりなんだ。」

「午後もあるからね。」

「ちゃんと食べないと倒れそうだもんね。」

そんな話をしていると、

「おっ、いたいた。」

聞き慣れた声がして顔を上げる。

トレーを持った一ノ瀬が、こちらへ歩いてきた。

「席、空いてる?」

「もちろん。」

一ノ瀬は佐竹の隣へ腰を下ろす。

「資料、順調?」

「うん。」

私は頷きながら答えた。

「さっき部長にも一度確認してもらった。」

「もう見せたの?」

「途中だけどね。」

「で、何て言われた?」

「見やすいって。」

その言葉を聞くと、一ノ瀬は満足そうに笑った。

「ほらな。」

「何が?」

「だから言っただろ。櫻井の資料は見やすいって。」

「またそうやって褒める。」

「事実じゃん。」

照れくさくなって苦笑すると、一ノ瀬は隣に座る佐竹へ視線を向けた。

「佐竹はどうだった?」

「営業目線で少し意見を言ったくらいだよ。」

「いや、それでいいんだよ。」

一ノ瀬は大きく頷く。

「営業と営業補佐で一緒に作る方が、実際使いやすい資料になるし。」

「確かに。」

佐竹も納得したように頷いた。

「俺も櫻井の視点は勉強になった。」

「え?」

思わず聞き返す。

「営業も見せ方は考えるけど、櫻井はどう見せたら伝わりやすいかを考えてる。」

「そんな大したことじゃないよ。」

「いや。」

佐竹は穏やかに笑った。

「そういう視点、大事だと思う。」

不意に真っすぐ言われて、思わず視線を逸らす。

「……ありがとう。」

そのやり取りを見ていた渚が、にやりと笑った。

「なんかさ。」

「ん?」

「二人とも、すっかりいいコンビになったよね。」

私と佐竹は顔を見合わせる。

「そうかな?」

「うん。」

渚は迷いなく頷いた。

「最初の頃はぎこちなかったのに、今は息ぴったり。」

「仕事だからだよ。」

私がそう答えると、渚は「ふーん?」と意味ありげに笑う。

その様子を見た一ノ瀬は苦笑しながら、

「塩谷、あんまりからかうな。」

と小さく言った。

「はーい。」

そう返事をしながらも、渚の笑みはしばらく消えなかった。