エリート同期は私の初恋でした

それから三十分ほど経ち、資料はひと通り形になった。

「こんな感じかな。」

私は大きく伸びをしながら、完成したExcelを見つめる。

「見やすい。」

佐竹が画面を見ながら頷く。

「部長も話しやすそう。」

「ありがとう。」

ちょうどその時だった。

「櫻井。」

部長が打ち合わせから戻ってきた。

「資料、できたか?」

「はい。一度ご確認いただけますか?」

「おう。」

部長は私のデスクの横へ来ると、画面をじっくり見始めた。

営業部のみんなが外回りへ出ていることもあり、フロアは静かだ。

カチッ。

マウスを操作する音だけが響く。

「……うん。」

部長は小さく頷いた。

「見やすいな。」

その一言に、思わずほっと息をつく。

「ありがとうございます。」

「このグラフも分かりやすい。」

部長は画面の一か所を指差した。

「営業会議でも使いやすそうだ。」

「ありがとうございます。」

「細かいところは午後にもう一度確認する。ひとまずこれで進めてくれ。」

「承知しました。」

部長は満足そうに頷くと、自分の席へ戻っていった。

「良かったね。」

隣で佐竹が小さく笑う。

「うん。」

肩の力がふっと抜ける。

「でも、佐竹が色々意見くれたおかげだよ。」

「俺は少し言っただけ。」

「その少しが助かったの。」

そう言うと、佐竹は少し照れたように笑った。

「櫻井って、ちゃんと人のこと見てるよね。」

「え?」

「自分一人で作ったみたいに言わないから。」

思いがけない言葉に、一瞬返事ができなかった。

「……そうかな。」

「うん。」

佐竹は穏やかに笑う。

「そういうところ、いいと思う。」

その笑顔に、胸が小さく高鳴った。

慌てて画面へ視線を戻す。

……暑さのせい。

そう思うことにした。