エリート同期は私の初恋でした

「じゃあ、俺はそろそろ行ってくる。」

腕時計を確認した一ノ瀬が営業バッグを手に取る。

「今日は暑いからな。二人とも、ちゃんと水分取れよ。」

「一ノ瀬もね。」

「おう。」

軽く手を挙げると、一ノ瀬は営業部を後にした。

営業部は再び静かな空気に包まれる。

「じゃあ、続きをやろうか。」

「うん。」

私はExcelの画面へ向き直った。

佐竹は隣の椅子に座ったまま、画面を見つめる。

「このグラフだけど。」

「うん?」

「表のすぐ横に置いた方が見比べやすいかも。」

「確かに。」

私はレイアウトを少し変更する。

「どう?」

「うん。その方が流れが分かりやすい。」

「じゃあ、このまま進めるね。」

カチカチ、とキーボードを打つ音だけが二人の間に流れる。

不思議と気まずさはない。

むしろ、この静かな時間が心地よかった。

しばらくして、佐竹がぽつりと口を開く。

「櫻井って、本当に仕事好きなんだね。」

「え?」

「さっきから楽しそうだから。」

思わず手を止める。

「そんな風に見える?」

「うん。」

少し照れくさくなりながら笑う。

「好きだよ。営業さんが『助かった』って言ってくれると嬉しいし。」

「……そっか。」

佐竹は小さく頷いた。

「そういうところ、櫻井らしい。」

その一言に、なぜだか胸が少しだけ温かくなった。

私は照れ隠しをするように、もう一度画面へ視線を戻した。

「ほら、手止まってるよ。」

「ごめん。」

佐竹は笑いながら、もう一度画面を覗き込む。

「午後には一回、部長に見せられそうだね。」

「うん。あと少し頑張ろう。」

私たちは再びExcelの画面に向かい、資料作りを進めていった。