エリート同期は私の初恋でした

佐竹は私の隣に椅子を寄せると、パソコンの画面を覗き込んだ。

「部長のデータ、結構まとまってるね。」

「うん。あとは見やすく整理するだけかな。」

私はExcelを開き、資料を作り始める。

「まずは年度ごとにまとめて……。」

「そのあとに業種別を入れたら、比較しやすそう。」

「確かに。」

私は頷きながら、表のレイアウトを少し組み替えた。

「こうかな?」

「うん、その方が分かりやすい。」

「じゃあ、この形で進めてみるね。」

佐竹は画面を見つめながら、小さく頷いた。

「あと、この業種だけ色を変えたら目に入りやすいかも。」

「いいね。それなら部長も説明しやすそう。」

二人で意見を出し合いながら、少しずつ資料が形になっていく。

「ありがとう。」

「いや、俺は営業目線で思ったこと言ってるだけだから。」

「それが助かるんだよ。」

そう言うと、佐竹は少し照れくさそうに笑った。

「櫻井ってさ。」

「ん?」

「仕事してる時、すごく楽しそう。」

「そう?」

「うん。」

私は思わず笑ってしまう。

「結構好きなんだ。こういう資料作るの。」

「なんか分かる気がする。」

「?」

「さっきからすごく集中してるし、楽しそうに作ってる。」

そんな風に見られていたなんて思ってもいなかった。

「見られてると恥ずかしいんだけど。」

「ごめん。」

そう言いながらも、佐竹はどこか楽しそうに笑う。

その時だった。

「おっ。」

聞き慣れた声に振り向く。

営業先から戻ってきた一ノ瀬が、私たちを見て笑っていた。

「二人とも、息ぴったりじゃん。」

「資料作ってるだけ。」

私がそう返すと、一ノ瀬は「はいはい」と笑いながら近付いてくる。

「でも、そのくらい自然にやり取りできるようになったってことだろ?」

「三か月前だったら、お互いこんなに話してなかったもんな。」

「……それは否定できない。」

「だろ?」

一ノ瀬は満足そうに頷くと、佐竹の肩を軽く叩いた。

「櫻井の資料、見やすいから期待しとけ。」

「もう、一ノ瀬。」

「褒めてるんだって。」

営業部に、三人の笑い声が静かに響いた。