エリート同期は私の初恋でした

午前中はいつも通り、電話対応や資料作成に追われていた。

営業さんから依頼された書類を作成し、メールの返信を済ませる。

気付けば時計の針は十一時を回っていた。

その時、メールの受信音が鳴る。

「来た。」

部長からだ。

「櫻井。」

佐竹が立ち上がり、私のデスクまで歩いてくる。

「部長から?」

「うん。今届いた。」

「じゃあ、一緒に確認しよう。」

私は添付されていたExcelファイルを開いた。

受注件数や受注金額が年度ごとにまとめられている。

「この辺はグラフにした方が見やすそうだね。」

「うん。業種ごとにまとめたら、傾向も分かりやすいかも。」

二人で画面を見ながら話していると、

「何してる?」

聞き慣れた声がした。

振り向くと、一ノ瀬が営業バッグを肩に掛けたまま立っていた。

「来週の営業会議の資料。」

私が答えると、一ノ瀬は「あぁ」と納得したように頷く。

「例の受注状況の分析か。」

「そう。」

「櫻井、その手の資料作るの得意だからな。」

「そんなことないよ。」

「いや、あるって。」

一ノ瀬は笑いながら続ける。

「去年の営業会議の資料も、部長に『見やすい』って褒められてたじゃん。」

「もう、そういうの言わなくていいから。」

思わず苦笑すると、一ノ瀬は「事実だし」と肩をすくめた。

そのやり取りを聞いていた佐竹が、小さく笑う。

「じゃあ安心だ。」

「え?」

「櫻井が作るなら、見やすい資料になりそう。」

思いがけない一言に、少し照れくさくなる。

「まだ作ってもないのに。」

「でも期待してる。」

「……プレッシャーかけないで。」

そう言うと、三人とも思わず笑ってしまった。

「悪い悪い。」

一ノ瀬は腕時計に目をやる。

「そろそろ出る時間だ。」

「もうそんな時間?」

「じゃあ、行ってくる。」

「いってらっしゃい。」

「気を付けて。」

一ノ瀬は軽く手を挙げると、営業部を後にした。

その背中を見送りながら、私はもう一度パソコンの画面へ視線を戻す。

「じゃあ、始めようか。」

「うん。」

佐竹は近くの椅子を引き寄せ、私の隣に座る。

二人で画面を見ながら、来週の営業会議に向けた資料作りが始まった。