エリート同期は私の初恋でした

7月。

気づけば、佐竹が異動してきて3ヶ月経った。

今では、一ノ瀬と肩を並べる程のエリートっぷりで営業部に佐竹が居るのが当たり前になっている。

五月から始まったクールビズにもすっかり慣れ、営業部ではネクタイ姿の人の方が珍しくなっていた。

「今日も暑いなぁ。」

「外は三十五度らしいですよ。」

朝からそんな会話が飛び交う。

「今年は本当に暑いですね。」

部長がハンカチで額の汗を拭きながら苦笑する。

「外回り組は熱中症に気を付けろよ。」

「はーい。」

営業さんたちが返事をしながら、それぞれ営業先へ向かう準備を始める。

私はいつものようにパソコンを立ち上げ、その日のスケジュールを確認する。

メールチェックを終え、営業さんから依頼されていた資料を印刷していると――

「櫻井。」

聞き慣れた声に振り返る。

「おはよう。」

「おはよう。」

佐竹は片手にアイスコーヒーを持ちながら、自分の席へ向かった。

異動してきた頃のぎこちなさはもうない。

仕事の話だけじゃなく、ちょっとした雑談を交わすことも増えた。

「今日も外回り?」

「午前中だけ。午後は支店にいる予定。」

「そっか。」

「何かあったら電話して。」

「了解。」

すると、

「櫻井、ちょっといいか。」

部長に呼ばれ、席を立つ。

「はい。」

「来週の営業会議で使う資料を作りたい。」

部長は手帳を開きながら続けた。

「今回は過去の受注状況を分析する予定なんだ。データは今日中に送るから、Excelで見やすくまとめてくれ。」

「分かりました。」

「佐竹。」

「はい。」

「営業目線で内容を確認してやってくれ。気になるところがあれば櫻井に伝えてほしい。」

「了解です。」

「よろしく頼む。」

部長はそう言い残し、会議へ向かった。

「櫻井。」

佐竹が私のデスクまで歩いてくる。

「データが届いたら声かけて。」

「うん。一緒に確認してもらえると助かる。」

「任せて。」

短いやり取りを交わし、お互いの席へ戻る。

三か月前は、仕事の話をするだけでも少しぎこちなかった。

でも今は違う。

一緒に仕事をすることが、少しずつ当たり前になっていた。

私はパソコンの画面に向き直り、部長から届くデータを待ちながら、今日の仕事に取りかかった。