「俺が勝手に皆森詩姫に片想いしてるだけ。鈍感でこいつが気付いてないってだけの話ですよ」
え──?
何言ってるの貴公子。
今私が完全否定をしようと思っていたのに。
記者は私に向けていた視線を、再び貴公子へと戻す。
「教室に通うようになって、付き合ってるって噂が流れていた時にはもう、絶賛片想い中だったし。あんたらが騒ぐせいでこいつがやめるって言い出すから……もういいわ」
どこか投げやりにも聞こえる言い方だったのに……貴公子の声も、顔も、まっすぐ私に向けられていて──
「俺は、こいつが……皆森詩姫が好きだよ」
言葉までもがまっすぐに、私の心へと刺さる。
驚く私を見てから、貴公子は瞬きをして記者を見据えた。
「ほら……欲しい言葉が聞けたんだろ?だったら好き勝手に書けよ。とびきりいい情報くれてやったんだからな」
華道界の貴公子の話し方ではない素の貴公子と突然の告白で思いがけない展開に、面食らっているようだったけど、記者はきっちり録音していたみたいで不敵な笑みを浮かべた。
「ええ、そうさせて頂きます。それではまた」
小走りに去っていく記者を見つめると、貴公子はうつむき、脱力したようにベンチへ座り込んだ。
「き、貴公子……何で」
いくらしつこい記者だからって、噂を肯定するような、そんなこと言わなくても良かったはずなのに。
あの女の子だって、彼女だって──
「……嘘じゃ、ねぇんだ」
「え?」
呟かれるように言われ、私は数歩、貴公子に歩み寄る。



